急激な円安により、輸入に頼る石油や小麦などが相次いで値上げをしています。しかし、資産運用にとってはチャンスです。そもそも円安にはどのようなメリットがあるのか、また、どのように資産運用に活用できるのかについて解説します。
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なぜ円安になった?
円安が進んだ原因としては、アメリカと日本の金利差が挙げられます。アメリカでは長くインフレが続き、それに伴い金利も上昇している状況です。
一方、日本ではデフレ状態が続き、金利も下がり続けています。保有していても利息を得られない日本円を売って、高利息を得られるアメリカドルを購入する流れが生まれ、円安ドル高となっているのです。
また、ロシアがウクライナに侵攻して紛争が勃発したことも、円安と無関係ではありません。ロシアは世界有数の原油や天然ガスの産出国です。ウクライナへの攻撃のためにこれらの資源の輸出が滞り、世界的な原油・天然ガスの価格高騰を招いています。
通常、資源の輸入はドル建てで取引されることが一般的です。価格高騰により活発な取引ができず、さらに円安が進む悪循環も生まれています。
そもそも円安とは
円安とは、円の価値が外国通貨と比べて低くなることです。円の価値が下がると日本円を買いたいというニーズが減るため、ますます円安が進みやすくなります。
円安になると、外国に気軽に行くことができなくなります。例えば、ニューヨークのあるホテルでは1泊500ドルの価格を設定していたとしましょう。1ドル=100円であれば50,000円で泊まれますが、1ドル=150円になると75,000円もの日本円が必要になります。
円安のメリット
円安になると海外に渡航しにくくなるといったデメリットが注目されますが、実際のところはデメリットだけではありません。円安には次のようなメリットもあります。
- 外貨建て資産の資産価値が増える
- 海外で日本製品が売れやすくなる
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
外貨建て資産の資産価値が増える
外貨建てで資産を保有している場合であれば、何もしなくても資産価値が増えます。例えば、アメリカの銀行口座に1万ドルの資産を保有していたとしましょう。1ドル=100円のときには100万円の価値ですが、1ドル=150円に進んだ状態では150万円の価値となります。
ただし、そのまま保有しているだけでは利益とはなりません。円安のタイミングで外貨建ての資産を売却し、日本円にすることで利益を確定しましょう。
海外で日本製品が売れやすくなる
円安が進むと、輸入商品の価格は上がります。反対に、海外では日本製品が購入しやすい状況になります。通常と同じ価格で販売しても通貨高が進む国の製品よりは割安になるため、価格競争において有利になるのです。
また、輸出をすると外貨で代金を受け取るので、円安になる前よりも多くの日本円を受け取ることができます。そのため、輸出関連の事業者においては円安は利益が出やすい時期といえます。
円安のデメリット
円安は日本全体の景気に悪影響を及ぼしています。令和4年度上期中の国際収支状況によれば、輸出は約49.5兆円、輸入は約58.8兆円で、貿易収支は約9.2兆円の赤字です。また経常収支は約4.8兆円で前年同期から約6.9兆円もの減少となり、黒字幅が大きく縮小しています。国際収支の悪化は、日本円の価値低下に他なりません。
また、アメリカを含め世界の人口は増加していますが、日本は人口減少が見られています。そのため、構造的に経済規模を縮小せざるを得ない状況ですが、アメリカなどの海外ではインフレを伴いながら成長していく余力があります。
参照:財務省「令和4年度上期中 国際収支状況(速報)の概要」
輸入関係では利益を得にくくなる
利益が生まれやすい輸出業とは異なり、円安では輸入関係は利益を得にくい状況になります。例えば、海外から石油や鉄鋼などを輸入して加工・販売する場合、原料の輸入コストが高くなるため、加工品の価格も値上げせざるを得ません。
しかし、価格を値上げすると買い手がつきにくく、販売量が減って利益が下がるでしょう。また、輸入品を販売する場合も同様です。仕入れコストが高くなるため、今までと同様の価格で販売する場合は利益率が低下します。
円安時の資産運用で投資すべき商品や方法
円安が進んだことで、国内外の資産価値に不均衡が生まれています。しかし、経済バランスが崩れた状態は投資のチャンスでもあります。次のいずれかの方法で資産運用に活かしてみてはいかがでしょうか。
- 外貨建て投資を行う
- 外貨預金を行う
それぞれの方法や利益が見込める理由について解説します。
外貨建て投資を行う
円安が進行するときは、外貨建ての資産を保有するチャンスです。例えば、1ドル=100円のときに100万円で購入した資産も、1ドル=150円になると、各種手数料を考えないならば1.5倍の150万円の価値になっています。
また、アメリカなどのインフレが続く国の資産に投資をすると、物価高騰から資産の価格が上がり、円安との相乗効果によりさらに日本円での価値が高まるでしょう。
投資信託や債券などの金融商品、株式、不動産などの資産は、いずれも円安とインフレで資産価値上昇のポテンシャルを秘めています。資産ごとの価値も見極めたうえで、外貨建て投資を検討しましょう。
外貨預金を行う
日本は世界的に見ても金利が低く、日本円で預金をしてもほとんど利息がつかないのが現状です。例えば、普通預金の金利は金融機関によっても異なりますが、年0.001%程度のことが多いです。100万円を預けていても利息はわずか10円にしかなりません。実際には税金が差し引かれて受け取ることになるため、8円ほどになってしまいます。
定期預金にすると適用される金利が少し高くなりますが、それでも年0.002%程度です。100万円を預けても、利息は税引き後で16円程度にしかなりません。
一方、インフレに伴い金利が上昇しているアメリカなどの国に預金をすれば、預けているだけでも多額の利息がつきます。外貨にするときと日本円に払い戻すときには手数料がかかりますが、それでも日本円で預金をするよりは効率良く増やせるでしょう。
また、インフレが進むことで、現状以上に金利上昇を見込むこともできます。さらに適用される金利が増えるなら、それに伴い利息も高額になります。資産運用の効率性を重視するのであれば、高金利かつ金利上昇の期待値の高い外貨預金に注目できるでしょう。
円安をチャンスに変えて資産運用を行おう
円安は外貨建て投資や外貨預金で資産を増やすチャンスです。アメリカでは優雅な生活を送るために125万ドル(1ドル=145円換算で約1.8億円)は必要だといわれています。しかし日本では、年金に加え夫婦で2,000万円ほどあれば、生活していけると目算されています。
デフレが続き、給与が上がりにくい日本で2,000万円を貯金することは簡単ではありませんが、外貨預金や外貨建て投資も視野に入れれば老後資金も準備しやすくなるかもしれません。海外での老後生活も良いですが、経済的な効率性を重視するなら、国内で生活して海外で増やすスタイルも検討してみてはいかがでしょうか。
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