働けなくなったときに使える公的保険とは?民間保険との違いや保障内容を解説

働けなくなったときに使える公的保険とは?民間保険との違いや保障内容を解説

保険・税

昨今、NISAの拡充に伴い、家計管理や資産形成に注目が集まっています。資産形成をする上で、投資の知識はもちろん必要です。しかし、忘れてはならないのが「もしも」への備え、つまり保険の知識です。

家計の負担を減らすべく、「保険の見直し」を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか?事実、必要以上の保険に加入して、高い保険料を支払っている方がいます。しかし、保険を見直す中で、「保険料を下げる」ことを目的に、本当に必要な保険まで解約してしまう方も少なくありません。
保険は、自分に合った商品を適切に選ぶことが重要です。そのために、まずは保険の「目的」と「必要な金額」を考えましょう。また、民間の保険に入っていなくても受けられる「公的な保障」を知っておくことも大事です。

この記事では、数ある公的保険の中でも、病気やケガで働けなくなったときに使える「高額療養費制度」と「傷病手当金」をご紹介します。

なお、投資信託相談プラザでは、「保険と投資のバランス診断」を行っております。保険と運用両方の知識をもつ専門家が、お客様の資産形成をトータルサポートいたします。保険の見直しを検討している方も、ぜひ一度ご利用ください。

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公的な保障とは?

公的な保障とは

「公的な保障(公的保険)」とは、保険料を納める代わりに、国や健康保険組合などから給付を受けられる制度のことを言います。一方、個人で民間の保険会社と契約し、保険料を支払う商品を「民間保険」と呼びます。

公的保険に関しては支給要件が細かく設定されており、また人によって異なるため、厚生労働省や現在加入している健康保険組合のHPなどで詳細を確認しましょう。

高額療養費制度について

高額療養費制度について

通常、医療費は総額の3割が自己負担です。しかし、治療の種類によっては自己負担分も高額になることがあるでしょう。そのような時に利用したいのが「高額療養費制度」です。

高額療養費制度とは、歴月(月の初めから終わりまで)に医療機関や薬局で支払った自己負担額が既定の上限を超えた際に、超えた分の金額が払い戻しされる制度です。保険適用される診療が対象であり、入院時の食事代や差額ベッド代、先進医療にかかる費用などは対象外です。また、自己負担の上限額は、被保険者の年齢や所得水準により異なります。

通常、払い戻しを受けるには、自身が加入している保険組合に「支給申請書」を提出します(※加入中の組合により手続きは異なります)。また、支給まで診療月から3か月ほど時間がかかります。

ただし、「限度額適用認定証」を申請し、病院や薬局の窓口にて保険証と併せて提示することで、1か月間の窓口での支払い金額が限度額までになります。

自己負担が限度額を超える場合

自己負担の上限額

では、以下の表でひと月の自己負担上限額を確認していきましょう。

自己負担の上限額

では、例として「70歳、年収約400万円、ひと月にかかった医療費の総額100万円」のケースを考えてみましょう。

通常、自己負担額は3割の30万円です。高額療養費を申請した場合、1か月の自己負担上限額は以下の通りとなります。

80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円

ひと月にかかった医療費の総額100万円のうち、自己負担額は3割の30万円です。そこから自己負担上限額を差し引いた金額が以下の通り高額療養費として払い戻しされます。

300,000円-87,430円=212,570円

高額療養費制度を利用することで、実質的な負担がかなり軽減されることがおわかりいただけたでしょうか。

世帯合算ができる

同一の医療保険に加入する家族がいる場合、各人が支払った自己負担額を1か月単位で合算することができます。合算額が上限を超えた場合には、超えた分が支給されます。ただし、別々の健康保険に加入していれば、住所が同じでも合算の対象にはなりません。

また、69歳以下の人については、2万1千円以上のものが合算の対象になります。70歳以上の方はすべての自己負担を合算できます。

ひとりの方が1か月以内に複数の医療機関で受診した場合も、合算することが可能です。

高額の治療が多数回にわたるとき

高額療養費の支給を1年間(直近12か月)に3回以上うけた場合は、4回目から自己負担の上限額がさらに引き下げられます。

高額療養費制度の注意点

高額療養費制度の注意点

高額療養費制度における自己負担の上限額は「1か月単位」です。したがって、同様の治療でも、治療が月をまたぐ場合には自己負担額が変わります。

先ほどと同じ「70歳、年収約400万円、医療費100万円」のケースで考えてみましょう。1か月で医療費が100万円かかった場合の自己負担額は87,430円でした。

ここでは、治療が月をまたぎ、1か月目に50万円、2か月目に50万円かかった場合を想定します。

1か月間の自己負担上限額=80,100円+(50万円-267,000円)×1%=82,430円

自己負担額の合計=82,430円×2か月=164,860円

このように、月をまたぐ治療になる場合は自己負担額が増えるので注意しましょう。

傷病手当金について

傷病手当金について

前の章で高額療養費制度について説明してきました。しかし、「病気で働けない期間に収入が減った時はどうなるの?」と考えた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

会社員・公務員の方が病気やケガで働けなくなってしまった時には、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。以下で支給条件と支給金額、支給期間をみていきましょう。

<支給条件>

  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと

以上のすべての条件に当てはまる場合に、傷病手当金が支給されます。なお、業務上の病気やケガについては、労災保険から「休業補償給付」を受けることができます。

<支給金額>

1日あたりの金額が休業日数に応じて支給されます。

1日あたりの金額=「直近12か月の標準報酬月額を平均した額」÷30日×2/3

※給与や手当などが支払われている場合は、それらを差し引いた金額が支給されます。

<支給期間>

同一の疾病・負傷に対して、支給を始めた日から通算して1年6か月

傷病手当金の注意点

傷病手当金の注意点

傷病手当金を受け取る際には、加入中の保険組合や協会けんぽに「傷病手当金支給申請書」を提出します。申請後、口座に傷病手当金が入金されるまでに、平均1~2か月かかるので注意しましょう。また、申請書には医師や会社による記入が必要な欄があるため、申請手続きを必ず確認しましょう。

また、先に述べたように、傷病手当金の対象者は「会社員」と「公務員」のみです。自営業者や個人事業主が加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度はありません。そのため、ご自身の状況により、就業不能保険などの民間保険への加入を検討しましょう。

なお、自治体により、新型コロナウイルス感染者に対して、国民健康保険からも傷病手当金が支給された例がありますが、あくまで特例と考えた方がよいでしょう。

保険選びの4ステップ

保険選びの4ステップ

以上、高額療養費制度と傷病手当金について説明してきました。公的保険は意外と大きな保障だと思われた方も多いのではないでしょうか?このほかにも遺族年金や障害給付など、「もしも」に対する様々な公的保険が用意されています。そのため、民間保険で用意すべき金額はそこまで大きくありません。

そこで、ここからは民間保険の加入や見直しを行う際に踏むべき4ステップをお伝えします。

  1. 保険に入る目的を決める
  2. 公的保険をふまえ、自分で用意すべき金額を計算する
  3. 貯蓄で対応できるか考える
  4. 公的保険と貯蓄で対応できない不足部分を民間保険でカバーする

まずは「どのようなリスクに備えるのか」という、保険に入る目的が一番重要です。リスクの種類は個人の状況によって異なります。今の自分に起こりうる事象のなかで、危険度が高いものをリスクとして考えましょう。

目的が決まったら、公的な保障制度が利用できるか調べます。リスクが実現した時に必要になるお金から、公的保険による支給金額を引いたものが「自力で用意すべき金額」です。基本は貯蓄で備えますが、貯蓄だけで難しい場合は民間保険への加入を検討しましょう。

公的な保障制度を活用しよう!

公的な保障制度を活用しよう

「もしも」の備えは公的保険と貯蓄で行うことが基本です。公的な保障をベースに考えることで、毎月の保険料を無駄にせず、限られたお金を有効活用することができます。

しかし、貯蓄が足りない場合や扶養家族がいる場合など、民間保険への加入が必要になるケースもあるでしょう。また、必要な保険や保障額は、年齢や家族構成などによって変わります。そのため、すでに民間保険を契約している方も、ライフステージに合わせて都度見直しを行うのが賢明です。

投資信託相談プラザには、保険会社での提案経験を持つIFAも在籍しています。保険の知識をもつプロと一緒に、「もしも」のお金について考えてみませんか?

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このコラムの執筆者

MONEY HUB PLUS 編集部

株式会社Fan

未来につながる投資情報メディア「Money Hub Plus(マネハブ)」の編集部です。
みなさまの資産形成に役立つ情報を日々発信しております。

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