劣後債の基礎知識|メリット・リスクや買い方を解説

劣後債の基礎知識|メリット・リスクや買い方を解説

資産運用

この記事のポイント

  • 劣後債は、発行体が破綻した際の法的弁済順位が普通社債などより低い代わりに、比較的高めの利率(利回り)が期待できる金融商品である
  • 普通社債に比べて格付けが低く評価される傾向があるほか、期限前償還(コール)による予定外の利子減少や、流動性の低さからくる途中売却の難しさといった特有のリスクを伴う
  • 商品性が複雑であるため、生活防衛資金を避けた余剰資金のなかで適切な資産配分を行い、自身に合ったプランを組むためにIFAなどの専門家を活用することも推奨される

「普通社債よりも利率が良いと提案されたけれど、劣後債とはどんな商品なのだろう」
「高い利率は魅力的だけれど、どのようなリスクや注意点があるのか知りたい」

資産運用を検討する中で、「劣後債(れつごさい)」という金融商品を目にし、疑問や不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。

劣後債は、一般的な社債と比べて高めの利率が期待できる金融商品です。しかし、その裏には「法的弁済順位が低い」「期限前償還の可能性がある」といった、劣後債特有の仕組みや注意点が存在します。仕組みをしっかり理解せずに購入してしまうと、想定外の事態に困惑してしまうことにもなりかねません。

本記事では、劣後債の基本的な仕組みから普通社債との違い、注意点、購入前にチェックすべきポイントまで分かりやすく解説します。ご自身の資産状況やリスク許容度に合わせた判断ができるよう、知識を深めていきましょう。

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劣後債とは?普通社債との違いや利率の仕組みを解説

まずは、劣後債がどのような債券なのか、その基本構造や普通社債との違い、高い利率が設定される理由について解説します。

劣後債の基本構造(法的弁済順位が低い代わりに高めの利率)

劣後債とは、発行体が経営破綻(倒産など)に陥った際、他の一般的な債務よりも額面金額や利子の弁済順位が「劣後する(後回しになる)」条件がついた社債のことです。

債券に投資する際、大きな懸念事項の一つが「発行体の破綻リスク」です。万が一、発行体である企業や金融機関が破綻した場合、保有する債務の弁済が行われますが、弁済には以下のような優先順位(法的弁済順位)があらかじめ定められています。

  1. 借入金や普通社債などの一般債務:優先的に弁済される
  2. 劣後債:一般債務の弁済が完了した後に、残った資産から弁済される
  3. 株式:弁済順位が低い

このように、劣後債は一般的な借入金や普通社債と比べて弁済の優先順位が低いため、万が一の際の額面回収リスクが高くなります。

その一方で、弁済順位が後回しになるリスクを引き受ける見返りとして、発行体は普通社債よりも比較的高めの利率(利子)を設定します。定期的な利子収入を得ながら、一般的な社債よりも高めの利回りを期待できる点が大きな特徴(メリット)です。

参照:
劣後債とは、何ですか?(動画説明あり)|SBI証券
初めての劣後債投資|楽天証券

普通社債・無担保社債・ハイブリッド債との違い

債券にはさまざまな分類や用語があり、混同しやすいため整理しておきましょう。

まず、「普通社債」は特殊な条件(劣後特約など)が付いていない一般的な社債を指します。一方、「無担保社債」は特定の担保を設定せずに発行される社債のことです。社債には担保付きと無担保がありますが、現在企業が発行している普通社債の多くは「無担保社債」の形式をとっています。

ここで注意したいのは、劣後債も基本的には無担保で発行されるという点です。つまり、普通社債と劣後債の違いは「担保の有無」ではなく、万が一の際の「弁済順位の違い」にあります。

次に、「ハイブリッド債」とは、株式(資本)と債券(負債)の双方の性質を併せ持つ金融商品の総称(カテゴリー)です。様々な分類方法がありますが、劣後債は、このハイブリッド債の一種とされることがあります。 

法的弁済順位の観点で整理すると、普通社債は銀行借入などの他の一般無担保債権と同順位であり、劣後債に対して優先されます。一方の劣後債は、「ハイブリッド債というカテゴリーに含まれ、普通社債などの一般債務よりも弁済順位が後回しになる代わりに高い利率が期待できる債券」という位置づけになります。

なぜ発行される?発行体(企業や金融機関)側の目的

投資家側から見れば「弁済順位が低い代わりに比較的高い利率が期待できる社債」ですが、発行体である企業や金融機関にはどのような発行目的があるのでしょうか。

主な理由は、資金調達を行いつつ「財務の健全性を担保・補強するため」です。

特に銀行などの金融機関では、国際的な自己資本比率規制(バーゼル規制など)により、一定水準以上の資本の維持が求められます。劣後債で調達した資金は、一定の条件を満たせば会計上・規制上のルールにおいて「資本」に準ずるもの(補完的資本など)としてカウントすることが認められています。

一方、事業会社には規制上の制約はないので、主に信用格付けを維持したまま資金調達ができるというメリットを活用していると考えられます。

つまり金融機関や事業会社は、既存株主の持分を希薄化させることなく自己資本比率を高めたり、資金を調達したりする手段として劣後債を活用しているのです。

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購入前に確認したい劣後債の注意点・リスク

比較的高い利率という魅力的な一面がある一方で、劣後債には特有の注意点やリスクが存在します。購入後に困惑しないよう、代表的な4つのリスクをしっかり把握しておきましょう。

1. 法的弁済順位が低く、万が一の際に弁済が後回しにされる

前述の通り、発行体が経営破綻した場合、弁済順位は一般債務や普通社債の後になります。

仮に発行体が破綻して清算手続きに入った場合、普通社債の保有者を含む一般債権者への弁済が優先されるため、資産が底をついてしまった場合には劣後債の投資家には額面金額がまったく戻ってこない、あるいは一部しか弁済されないリスクがあります。

この「法的弁済順位の低さ」が、劣後債における重大なリスク要因であることを正しく理解しておく必要があります。

2. 普通社債よりも格付けが低く設定される傾向がある

格付け機関(R&I、JCR、S&P、Moody’sなど)が提示する信用格付けにおいても、劣後債は注意が必要です。

同一の企業が発行したものであっても、普通社債より法的弁済順位が低く設定されているため、劣後債の格付けは普通社債の格付けより1〜2ノッチ(段階)低く評価されるのが一般的です。(※格付け機関や発行体の業種、商品性等によって差はあります)

例えば、発行体自体の信用力が「AA(ダブルエー)」であっても、発行される劣後債の格付けは「A(シングルエー)」や「BBB(トリプルビー)」に下がるケースがあります。格付けの低さは信用リスクの高さを示しているため、事前の格付けチェックは欠かせません。

3. 期限前償還(コール)に関するリスク

劣後債には、あらかじめ償還期限が定められている「期限付劣後債」と、償還期限そのものが設定されていない「永久劣後債」があります。多くの場合、発行から5年後や10年後などに満期を待たずに償還できる「期限前償還(コール)条項」が付与されています。 

期限前償還は発行体の「権利」であり「義務」ではないため、投資家は「償還された場合」と「償還されない場合」の双方のリスクを考慮しておく必要があります。

  • 期限前償還された場合のリスク
    • 利子収入の減少:予定より早く償還されることで、本来想定していた利子収入が得られなくなります。 
    • 再投資リスク:償還された資金を再投資しようとした際、同等の高利率な運用先が見つからない可能性があります。 
  • 期限前償還されなかった(見送られた)場合のリスク
    • 資金の長期間固定化:発行体がコールを行わなかった場合、当初の想定より長期にわたって資金が拘束されることになります。

なぜ発行体は期限前償還(コール)を行うのか?

発行体が早期償還を選択する背景は、発行体の種類によって異なります。 

  • 金融機関の場合(自己資本規制への対応)
    • 金融機関が発行する劣後債は、償還期限が近づくにつれて「自己資本」に算入できる比率が段階的に減少するルールがあります。そのため、自己資本としてのカウント効果が薄れた古い劣後債を償還し、新たに劣後債を発行して高い自己資本比率を維持しようとします。 
  • 事業会社の場合(資金調達コストの見直し)
    • 市場の金利状況の変化などに応じ、より有利な条件で資金を再調達するなど、調達コスト全体の調整を目的に期限前償還を行うことがあります。

多くの劣後債は最初に権利が行使できる日(初回コール日)に期限前償還される傾向にありますが、市場環境や発行体の判断で見送られるケースもあります。

「必ずしも当初の想定通りに償還されるとは限らない」という前提を持っておくことが大切です。 

4. 流動性が低く途中売却が難しくなる場合がある

劣後債は、普通社債や国債に比べて発行額や市場での流通量が少ないケースが多く、流動性(取引のしやすさ)が低い傾向にあります。

満期や期限前償還日まで保有し続ける前提であれば大きな問題にはなりませんが、「急にお金が必要になったため途中で売却したい」と考えた場合、買い手が見つかりにくかったり、希望する価格よりも低い価格で売却せざるを得なくなったりするケースがあります。

したがって、劣後債への投資は、当面使う予定のない十分な余剰資金で行うことが原則となります。

劣後債はどこで買える?取扱窓口と購入時のチェックポイント

劣後債の購入を検討する場合、どのような手順や窓口があるのでしょうか。

主な取扱窓口(証券会社など)

劣後債は、主に証券会社などの金融機関で購入することができます。新しく発行される「新発債」として募集されるタイミングで申し込むか、すでに市場で取引されている「既発債」を購入する方法が一般的です。

取扱銘柄や最小購入単位(100万円単位、1,000万円単位など)は各証券会社によって異なります。個人投資家向けに小口化された劣後債が出回るタイミングは限られているため、取扱情報をこまめに確認することが大切です。

参照:
債券取引ガイド|SBI証券
債券 取引デモ|楽天証券

購入時のチェックポイント

劣後債を購入する際は、必ず事前に交付される「目論見書(投資説明書)」や案内書類を精読しましょう。特に以下の項目は要チェックです。

  • 利率と利払日:固定利率か変動利率か、年何回利子が支払われるか。
  • 期限前償還(コール)条項:初回コール日はいつか、期限前償還の要件はどうなっているか。
  • 格付けの確認:発行体自体の格付けだけでなく、「当該劣後債そのものの格付け」がどう評価されているか。

「表面上の高い利率」だけに目を奪われるのではなく、こうした条項をしっかり確認し、リスクとリターンのバランスを理解した上で申し込むことが大切です。

劣後債への投資で失敗しないためのポイント

劣後債の購入で後悔しないために、個人投資家が心がけるべき実践的なポイントを2点紹介します。

自身のリスク許容度と資産全体での配分比率を把握する

特に避けたいのは、手持ち資産の大部分や老後資金の大半を劣後債に集中させてしまうことです。

劣後債は比較的高い利回りが期待できる一方で、発行体の信用リスクや途中売却の難しさを伴います。万が一の事態が起きても生活に支障が出ないよう、「資産全体の中で劣後債が占める割合(ポートフォリオの配分)」を適切にコントロールしましょう。

預貯金や国債といった価格変動リスクを抑えた資産で十分な生活防衛資金を確保した上で、余剰資金の一部を劣後債へ配分するというスタンスが基本となります。

発行体の財務健全性や格付けを入念に調べる

劣後債は発行体の経営状態に大きく左右されます。そのため、購入前には発行体の財務健全性や信用力を入念に調べることが重要です。

企業の財務状況(自己資本比率、キャッシュフロー等)や業績の推移、格付け機関による評価をチェックしましょう。「高い利率が提示されているということは、それだけリスクが高いのかもしれない」という視点を持つことが、予期せぬ失敗を防ぐ鍵となります。

劣後債の購入で迷ったら「資産運用アドバイザー(IFA)」へ相談を

劣後債は魅力的な利子収入が期待できる反面、法的弁済順位やコール条項など、一般的な債券よりも仕組みが複雑です。

個人でリスクや期限前償還条項などの複雑な条件を見極めるのは難しい

「目論見書を読んだが、期限前償還条項や格付けの意味を正しく理解できているか不安」
「自分の資産状況に対して、劣後債を購入するリスクが高すぎないか判断できない」

このように一人で悩まれるケースは少なくありません。

金融商品は、利率の高さだけで良し悪しを判断できるものではありません。将来の金利変動の見通しやご自身の年齢・ライフプランなどを総合的に考慮して判断する必要があります。

そのため、専門的な知識を持たない個人が一人で判断を下すのは容易ではないのが実情です。

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まとめ

劣後債は、法的弁済順位が低い代わりに普通社債よりも比較的高めの利率が得られる魅力的な金融商品です。しかし、期限前償還のリスクや格付けの低さ、流動性の問題など、注意すべきポイントがいくつか存在します。

失敗を防ぐためには、商品の仕組みを正しく理解し、ご自身の資産全体における適切な配分を見極めることが欠かせません。

ご自身の資産状況に合った運用プランを整理したい方は、客観的なアドバイスが得られる「資産運用アドバイザー(IFA)」へのご相談をぜひ検討してみてください。

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※国内債券の取引にかかるリスク・費用について
<リスク>
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<リスク>
債券は、債券の価格が市場の金利水準の変化に対応して変動するため、償還前に換金すると損失が生じるおそれがあります。また、債券を発行する組織(発行体)が債務返済不能状態に陥った場合、元本や利子の支払いが滞ったり、不能となったりすることがあります。外国債券(外貨建て債券)は為替相場の変動等により損失(為替差損)が生じたり、債券を発行する組織(発行体)が所属する国や地域、取引がおこなわれる通貨を発行している国や地域の政治・経済・社会情勢に大きな影響を受けたりするおそれがあります。
<費用>
外国債券を購入する場合は、購入対価のみお支払いいただきます(委託手数料はかかりません)。また、売買における売付け適用為替レートと買付け適用為替レートの差(スプレッド)は債券の起債通貨によって異なります。

このコラムの執筆者

道谷 昌弘

株式会社Fan IFA

AFP(日本FP協会認定) 大学卒業後、大手証券会社に入社。国内営業部門にて法人・個人の資産運用アドバイスを行う。8年間勤めたのち退社し、より中立的なアドバイスができるIFA(独立系投資アドバイザー)に転身。現在は富山を拠点に、全国各地のお客様に幅広くコンサルティングを行いながら、お客様にとって本当に良い商品提案を日々追求している。

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