資産運用の手段としてよく知られている「投資信託」は、一般的に個人が利用するイメージが強いですが、法人にとっても有効な資産運用の手段です。
この記事では、法人が投資信託を活用することで、どのように資産を効率的に運用できるのかを詳しく解説していきます。具体的なメリットや商品選択のポイントを分かりやすくご紹介します。ぜひ、貴社の資産運用にお役立てください。
INDEX
法人の資産運用に投資信託がおすすめな理由とは
法人が投資信託を利用するメリットとして、以下の4点があげられます。
- 専門家による運用が可能
- 少額から分散投資が可能
- 流動性が高く、売却が容易
- 損失が出た場合、利益と相殺したり、繰り越したりできる
詳しくみていきましょう。
1.専門家による運用が可能
投資信託(ファンド)とは、多くの投資家から集めた資金を運用の専門家が運用し、その運用成果を投資家に還元する金融商品のことです。
ここでポイントなのは、投資信託の運用は運用の専門家が行う点です。まず、貴社において運用担当者はどのような方が担当されるのかイメージしてみてください。運用担当者は、自社の資産のポートフォリオを作成し、投資方針を策定して資産の配分比率を定める必要があります。
運用担当者が財務担当の社員である場合、配置転換や退職などで担当者が変わる可能性があります。どのような方が担当してもある程度のクオリティで運用をすすめることができるのが、投資信託を用いた資産運用なのではないでしょうか。
なぜなら投資信託は、投資のプロが株式や債券などに投資・運用する商品であることから、専門家の力を借りられるため、投資初心者でも比較的はじめやすいとされているからです。
2.少額から分散投資が可能
投資信託は、法人の資産の規模に関わらず、少額から投資を開始できます。また、一つの投資信託に様々な種類の資産が組み込まれているため、分散投資によるリスクの軽減も期待できます。大きなリターンを狙うよりも、リスクを抑えた安定的な資産運用を目指したいと考えている場合におすすめです。
3.流動性が高く、売却が容易
多くの投資信託は、原則としていつでも売却することが可能です。そのため、必要な資金を迅速に調達できるというメリットもあります。
解約の際に、信託財産留保額(換金時に負担する費用)がかかる商品もあるので注意しましょう。なお、投資信託の基準価額は毎日変動します。当日の基準価額がいくらになるのかわからない状況で取引をする、ブラインド方式で売買されることはおさえておきたいポイントです。
4.損失が出た場合、利益と相殺したり、繰り越したりできる
投資信託の運用成績は運用する対象やタイミングに左右されますので、運用がうまくいき利益が得られることも、うまくいかず投資した額を下回り損をすることもあります。投資信託の運用によって生じた損益は、投資家それぞれの投資額に応じて投資家に帰属します。
つまり、銀行の預貯金等とは異なり、投資信託は元本が保証されている金融商品ではありません。
ただ、保有している投資信託を売却することで損失が発生した場合は、本業の利益と相殺することができます。そのため、結果的に本業の利益から計算される法人税の負担を軽減することができます。
また、発生した損失は青色申告を行っている企業であれば、翌年以降最大10年間繰り越すことが可能です。
投資信託における収益分配金、解約・償還時の収益について、一部のものについては益金不算入の適用を受けることができるということもポイントです。
益金不算入とは、法人が受け取った収入であっても、法人税の計算上、益金(所得)に含めないことができる制度のことです。これにより、二重課税を防ぎ、企業の負担を軽減する効果があります。
所得税の税額控除についてもおさえておきましょう。投資信託の分配金配当時には所得税が源泉徴収されますが、源泉徴収された所得税は法人税の先払いとなるので、計算上、源泉徴収を受けた所得税額分は所得税額控除が可能です。
逆にデメリットとは?
法人口座にはNISAのような非課税制度がない
NISAとは、通常、株式や投資信託等の金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対してかかる約20%の税金がかからなくなる制度です。ただし、NISA口座で投資できる上限金額は決まっています。
法人の資産運用において、NISAに該当するような税制上の優遇措置はなく、発生した運用益はすべて本業で発生する利益と同様に課税の対象となります。
一般口座を利用する必要がある
個人が投資信託を買付する場合、一般口座のほかに特定口座を選択することも可能です。特定口座とは、投資商品を保有する際に用意されている口座の一つです。特定口座を選択した場合、金融機関が、保有する商品の譲渡損益を計算して「年間取引報告書」を作成してくれます。
法人のお客様が投資信託を買付する場合は、一般口座しか選択することができません。つまり、担当者の事務負担がその分増えることとなります。
融資に不利になる場合がある
もし融資を受けたいと考えている場合、過剰に投資を行うことで現預金が手元に残らず、融資審査で不利になるケースがあります。
金融機関によって融資審査の基準が異なるため、投資に現預金を回すことが必ずしも融資審査に不利になるとは限りませんが、いずれにしても本業とのバランスを保って投資を行いましょう。
投資信託での資産運用がおすすめな法人とは?
内部留保を活用したい
投資信託を用いた資産運用は、内部留保(余剰資金)を活用したいという場合におすすめです。運転資金など、ある程度の現預金を保有することは、健全な企業経営において重要なことですが、収益を生まない資産を多く抱えることによって、総資産利益率(ROA)や総資産回転率の低下に繋がる可能性があります。
ROAは、同業他社と比較することで、その企業の収益性に対する相対的な評価が可能です。ROAが低い企業は、一般的に収益性が低いとみなされる傾向があります。
繰越損失を利用する
先述のとおり、青色申告を行っている企業であれば、過去10年間の赤字分を将来の黒字と相殺することが可能です。
この制度を活用することで、10年の間に利益が発生した際に損失を相殺し、長期的に税金の負担を軽減することができるでしょう。
参考 国税庁 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
資産運用担当者の知識や経験の有無に左右されず、一定の運用結果を望む場合
先述のとおり、運用担当者の配置転換や退職などで担当者が変わってもある程度のクオリティで運用をすすめることができるのが、投資信託を用いた資産運用です。
投資信託は、運用のプロがさまざまな種類の株式や債券などに分散投資を行います。担当者がすべての銘柄を分析し、分散投資をする手間を省くことができます。
中長期的な視点で、事業へ投資を計画している
投資信託は商品にもよりますが、短期的なリターンはそれほど期待できません。もしすぐに設備投資の予定があるのであればおすすめできませんが、いずれ設備投資の予定があるということが事前にわかっている場合、それに向けて準備をする目的で投資信託で運用するのもいいでしょう。
退職金の資金確保
役員や従業員の退職金の支払いに備える制度としては、中小企業退職金共済制度などの制度があげられますが、役員の加入に制限があります。柔軟に使えるまとまった資金の準備に、投資信託での運用はおすすめです。
法人の投資信託の選び方
法人の投資信託選びは、企業の将来を左右する重要な決断です。単に資金を増やすだけでなく、企業の事業戦略やリスク許容度に合わせて適切な投資信託を選ぶ必要があります。
法人の投資信託選びの6つのステップ
投資信託を選ぶ際は、以下の6つのステップを踏まえて進めましょう。
- 投資目的を明確にする
- リスク許容度を把握する
- 運用期間を決める
- 投資対象を選ぶ
- 複数の投資信託を比較検討する
- 専門家に相談する
投資の目的を明確にすることは、資産運用戦略策定の基礎となります。たとえば、余剰資金を増やして、その資金を中長期的に新しい事業への設備投資に使いたいという目的であれば、長期的な視点で安定した資産形成を目指し、よりリスクの低い商品を選ぶことが考えられます。
繰越控除による節税効果を求めるあまり、リスクの高い投資信託を複数保有することはおすすめできません。
本業が赤字の場合は慎重に判断しましょう。本業の立て直しが最優先事項です。投資による収益で補填を検討しているとすれば、投資はあくまで将来の不確実なものであるため、短期的な資金の穴埋めを目的とすることは、大きなリスクを伴います。
投資信託は、中長期的な資産形成を目的とした商品であり、短期的な収益を保証するものではありません。
法人の投資信託選びのポイント
分配金の支払い頻度を確認しよう
投資信託で利益を得るのは、分配金の受取時と、投資信託の売却(譲渡)時の2つのケースがあげられます。
中でも分配金の支払い頻度はよく確認しておきましょう。分配金は、基本的に投資信託の基準価額から支払われるため、高頻度の分配は、基準価額の低下を招く可能性があります。
普通分配金の場合、法人の所得に含めて課税されます。支払い頻度によって、税金計算のタイミングが変わり、年間の税負担額が変動する可能性があります。
インデックス型・アクティブ型・テーマ型
投資信託はその運用手法によって分類が可能です。「インデックス型」「アクティブ型」と耳にしたことがある方も多いかもしれません。
インデックス型は、あらかじめ定めた指数の動きに連動することを目指す運用手法で、信託報酬などのコストが安いことが特徴です。アクティブ型は、あらかじめ決められた指数を上回るリターンを目標とする運用手法です。インデックス運用の投資信託に比べると信託報酬などのコストがかかります。
この他に「テーマ型」というものがあります。特定のテーマに絞って投資を行う投資信託のことです。たとえば「FinTech」「半導体」「AI」などの例があげられます。
こういった投資信託を個人で保有する場合、トレンドの変化に対応できなかったときに大きく損失を出しやすいという点がデメリットですが、法人の資産運用の場合は状況が異なります。
法人の事業内容と関連性の高いテーマに投資することで、事業とのシナジー効果が期待できます。
専門的な知識が必要となるテーマ型投資信託の銘柄選定の際も、社内に知識のある担当者がいれば容易にすすめることができるでしょう。
法人の投資信託選びも投資信託相談プラザのIFAにご相談ください
投資信託を選定する際は、自社の財務状況や投資目標をしっかりと把握し、資産運用アドバイスの専門家に相談することをおすすめします。
投資信託相談プラザのIFAは、長年の経験と専門知識を活かし、貴社の財務状況を勘案した上でポートフォリオをご提案します。現状の財務状況を詳細に分析したうえで、将来のキャッシュフローを予測し、投資計画に反映させます。また、特定の金融機関に属していないため、中立的なご提案が可能です。
まずは、お気軽にご相談ください。
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このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
株式会社Fan
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