「投資信託は避けたほうがいい」といわれることがあります。実際のところ投資信託はメリットの多い投資商品ですが、なぜ避けるようにいわれることがあるのでしょうか。この記事では、投資信託の注意すべき点を説明し、リスクを抑えて投資をおこなうコツや、投資の基本の考え方を紹介します。
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投資信託は避けたほうがいいといわれる理由
インターネットやマネー系の雑誌などで、「投資信託は避けたほうがいい」という記事を見たことがあるかもしれません。また、投資経験のある知人などに「投資信託はおすすめしない」といわれることもあるでしょう。
投資信託は避けたほうがいいといわれる理由としては、次の4つが考えられます。
- 手数料がかかる
- 元本割れのリスクがある
- 選択肢が多く選びにくい
- 短期間で利益が出るとは限らない
それぞれの理由について説明します。
手数料がかかる
投資信託には手数料がかかります。購入・売却のときに手数料がかかるだけでなく、運用中も信託報酬と呼ばれる手数料が発生しています。なお、信託報酬は1日あたりで計算するため、運用期間が長くなるとその分、高額になる点に注意が必要です。
元本割れのリスクがある
投資信託は、元本が保証されていません。たとえば預金なら、元本が保証されているだけでなく、将来受け取れる利息もあらかじめ計算することが可能です。お金を預けている金融機関が破綻したときであっても、1金融機関につき1人あたり1,000万円までの元本と利息は保証されます。
しかし、投資信託は元本が保証されていないため、利益が得られない可能性があるだけでなく、運用額よりも受取額が少なくなるケースも珍しくありません。
選択肢が多く選びにくい
投資信託は商品数が多いため、運用方針や今までの成果などを比較して、自分にあったものを選択できます。しかし、選択肢が多すぎて、どれを選んでよいか迷うこともあるでしょう。証券会社によっては数千もの選択肢があり、選びにくさを感じる可能性があります。一方、預金や国債などであれば選択肢は多くはありません。
短期間で利益が出るとは限らない
預金は、基本的には元本が保証されています。安定性を目指す方には適した方法ですが、多額の利益を期待する方にはあまり向かない方法です。
その点、投資信託は元本保証されてはいませんが、値上がり幅が高いものもあり、短期間で多額の利益を得られる可能性があります。リスクはあってもハイリターンを期待する方にも、適した方法といえるでしょう。
とはいえ、投資信託のすべての商品において、多額の利益を期待できるわけではありません。安定性の高い債券が中心の商品や、値動きの幅が少ない業種・企業の株式をまとめた商品も多いため、短期間で利益が出ないケースも多いです。
短期間で利益を目指すのであれば、大幅な値上がりが期待できる業種・企業の株式をまとめた商品に注目できます。ただし、大幅な値動きが期待できる商品は、元本割れのリスクも高くなります。少額のみを運用するなど、十分に注意することが必要です。
投資信託のメリットとは?
投資信託固有の特徴やリスクに注目すると、「投資信託は避けたほうがいい」という結論になってしまうこともあるかもしれません。
しかし、投資信託での運用はデメリットばかりではありません。次のメリットもあります。
- 少額から投資できる
- 分散投資・積立投資が可能
- 選択肢が多い
それぞれのメリットについて具体的に見ていきましょう。
少額から投資できる
投資を始めるときには、元手となる資金や資産が必要です。たとえば不動産投資をする場合であれば不動産が必要です。不動産をすでに持っている場合でも、賃貸物件の建築費やリフォーム代などがかかるかもしれません。
不動産がない場合なら、不動産を購入する資金やローンを組むための頭金が必要です。場合によっては数千万円、数億単位の資金が必要になることもあります。
また、株式投資を始める場合も、まとまった資金が必要になることが多いです。国内株式は通常100株単位で購入するため、1株1,000円なら10万円は少なくとも準備しておかなくてはいけません。
しかし、投資信託であれば小口購入が可能なため、少額から始めることも可能です。証券会社によっては100円から投資できることもあり、初めて投資をする方もチャレンジしやすいでしょう。
分散投資・積立投資が可能
投資信託とは、そもそも複数の債券や株式を組み合わせてファンドを作り、そのファンドに対して投資をする金融商品です。すでに複数の債券や株式が組み込まれているため、自動的に分散投資ができます。
分散投資は、特定の債券・株式の価格変動に影響を受けにくくなる点がメリットです。たとえば株式投資であれば、保有している銘柄の株価が大幅に下落すると、資産の価値も大きく目減りしてしまいます。
しかし、株価下落した銘柄が投資信託のなかに組み込まれているなら、資産価値は下がる可能性がありますが、株式単体で保有しているよりはダイレクトには影響を受けません。複数の投資信託に資産を分散しているなら、より大きな分散投資効果を得られます。
また、積立投資が可能な点も、投資信託のメリットです。積立投資とは一定期間に一定数量あるいは一定額の投資をすることです。購入するタイミングを分散できるため、割高なタイミングでまとめて購入してしまうリスクを回避できます。
多くの証券会社では積立投資信託(積立投信)を取り扱っています。毎月コツコツと資産運用したい方や、投資信託の購入タイミングで迷う方も、積立投信を検討できるでしょう。
選択肢が多い
投資信託の商品数が多いことは、デメリットにもなりますがメリットとも考えられます。商品数が少ないとご自身の運用方針にあう商品が見つかりにくいですが、商品数が多いなら、運用方針にあうものも見つかりやすくなるでしょう。
選択肢が多いことをメリットと考える方は、証券会社を選ぶときに投資信託の商品数に注目してみてはいかがでしょうか。投資信託の商品数は、証券会社によって大きく異なります。オンラインで売買できるネット証券のなかには数千種類扱っているところもあるため、チェックしてみてください。
資産運用を始める前に知っておきたい基本の考え方
「お金を使わずに銀行に預けているから、資産運用をする必要はない」と考えている方も少なくありません。しかし、その考え方は正しいでしょうか?預金をすると適用金利に応じて利息がつきますが、預金の金利をインフレ率が上回っているため、資産価値は大きく目減りしているかもしれません。
たとえば2022年の日本の消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比3.0%でした。一方、預金の金利は年0.001%(税引き前)です。インフレ率や消費者物価指数が預金の金利を上回る状態が続く限り、預金だけですべての資産を管理することは資産価値を減らしてしまう可能性があります。
インフレによる資産減少を回避するためにも、預金以外の方法での資産運用を検討してみましょう。そして、資産運用を開始するにあたって、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 投資信託に限らずリスクはつきもの
- 元本割れしない投資手法はリターンも少ない
- 短期間でリターンを見込める手法はハイリスク
それぞれのポイントについて具体的に説明します。
投資信託に限らずリスクはつきもの
投資信託はリスクのある運用方法です。元本割れする可能性があり、運用額よりも受取額が減るケースも少なくありません。
しかし、投資信託だけがリスクのある運用方法ではありません。株式や不動産など、すべての投資には多かれ少なかれリスクがあります。
そのため、「リスクがあるから投資信託をしない」と結論付けるのではなく、「リスクを正しく理解して、運用する」ことが大切です。リスクを減らす方法については後述します。ぜひ参考にしてください。
元本割れしない投資手法はリターンも少ない
元本割れを避けたいと考え、預金や国債などの元本割れしないとされている方法のみで運用する方もいます。しかし、元本割れしない投資手法は大きなリターンを得られる可能性が低く、現在のように高インフレ率・低金利の状態では、リターンを得てはいても資産価値が目減りしている可能性もあります。
また、預金や国債は元本割れしないといわれていますが、まったくリスクがないわけでもありません。発行元が経営破たんすることで、予定していた利息すら受け取れないこともあります。(※)
大切な資産を守るために、ある程度リスクを取った運用も検討してみましょう。とりわけすべての資産を預金や国債のみで管理している方は、資産の「金額」ではなく「価値」に注目して、運用方法を見直してみましょう。
※預金保険制度 定期預金や利息の付く普通預金等(一般預金等)は、預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算され、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。それを超える部分は、破綻した金融機関の残余財産の状況に応じて支払われるため、一部支払われない可能性があります。
参考:預金保険制度:金融庁
短期間でリターンを見込める手法はハイリスク
高インフレ率のなかで資産を守るために、ある程度リスクを取った運用も検討してみましょう。しかし、リスクが高すぎるのは考えものです。リスクが高いといわれる方法で運用することは、大きなリターンが得られる可能性もありますが、大切な資産を大きく目減りさせる可能性も高まり、予想していたように運用の成果を得られないかもしれません。
運用方法がハイリスクかどうかを見極める方法として、「短期間で利益を見込めるか」という点に注目できます。短期間で利益を見込める手法は基本的にハイリスクのため、とりわけ投資経験が少ない方は避けておくほうがよいかもしれません。
投資信託で失敗しないための対策とは?損する人の特徴などもご紹介
リスクを抑えて投資をするコツ
預金や国債などの元本割れをしない投資手法だけで運用すると、インフレ率よりも適用金利が下回り、資産価値が目減りする可能性があります。大切な資産を守るためにも、ある程度リスクを取って運用していくことが必要といえるでしょう。
しかし、リスクが高すぎると短期間で多額の資産を失うこともあるため、適度にリスクを抑えて運用することが大切です。次の2点に留意するならば、投資信託や株式などの元本割れのリスクがある運用方法も、ある程度はリスクを抑えられるでしょう。
- 少額・分散・長期を心がける
- 手数料に注意する
それぞれのポイントを説明します。
少額・分散・長期を心がける
資産運用においてリスクを抑えるためには、少額・分散・長期の3つが基本となります。
「少額」とは、運用する資金を抑えることです。少額だけを運用するなら、万が一、すべてを失っても被害は少なくなります。
しかし、運用する資金が少なすぎると期待できる利益も少なくなるため、インフレに対抗できるほどの成果は得にくくなるでしょう。資産運用になれるまでは運用額を少額に抑え、経験を積みつつ、徐々に運用額を増やすほうがよいかもしれません。
また、「分散」とは、運用手法を複数に分けることです。
例:運用資金が1,000万円の場合
- 国債 300万円
- 投資信託 100万円
- 株式 100万円
- 不動産投資 500万円
というように資金を分散させて運用しましょう。このように分散しておくなら、不動産価値の下落や株式の発行体の倒産といった予想外のことが起こっても、すべての資産を失わずに済みます。
運用商品を分散させることも大切です。たとえば投資信託で100万円を運用する場合でも、100万円全額をひとつの商品で運用するのではなく、2つ、3つに分けるようにしましょう。
なお、商品を分散するときは、組み合わせも大切です。投資対象の業界や運用方針が類似していると、値動きも類似する傾向にあります。異なる業界や異なる運用方針の商品を選び、リスクヘッジを取るようにしてください。
「長期」とは運用期間を長くすることです。短期間で利益を得ようとすると、どうしてもハイリスクな商品・運用手法を選ぶことになりかねません。リスクを抑えつつ利益を確保するためにも、長期的に資産運用していきましょう。
手数料に注意する
運用手法や運用商品を決めるときは、手数料にも注目してください。たとえば、株式や投資信託の売買を頻繁におこなう場合であれば、売買手数料が低く設定されている証券会社を選ぶことが大切です。
また、株式投資においては運用手数料は発生しませんが、投資信託は運用手数料に相当する信託報酬がかかります。信託報酬は運用日数に応じて発生するため、長期間運用するときは、購入・売却時の手数料よりも信託報酬に注目するようにしましょう。
なお、投資信託には、日経平均株価やTOPIXなどの指数に連動して運用するインデックスファンドや、より積極的な成果を目指すアクティブファンドなどの種類があります。一般的にはインデックスファンドはアクティブファンドよりも信託報酬が低めに設定されています。
どの商品を選ぶか迷ったときは、インデックスファンドも検討してみましょう。運用の候補となる商品が複数あるときは、手数料を比較するのもひとつの選び方です。
投資信託が不安なときは専門家に相談しよう
「投資信託は避けたほうがいい」のではなく、「リスクを正しく理解せずに投資信託を購入することはやめたほうがいい」といえます。投資信託は確かに元本割れなどのリスクがありますが、少額から始められるだけでなく、分散投資や積立投資にも適しているため、上手に活用すれば大切な資産を増やせる可能性があります。
また、投資信託だけがリスクのある資産運用方法ではありません。資産運用の手法は、いずれも多かれ少なかれリスクがあるため、リスクを考慮しつつ適切に運用することが大切です。
資産運用について迷ったときは、専門家のアドバイスを参考にすることがおすすめです。「投資信託の選び方がわからない」「資産をどのように分散して運用すればよいかわからない」などのお悩みがある方は、投資信託相談プラザの個別相談を利用してみてはいかがでしょうか。
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このコラムの執筆者
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