株の買い時は、「上昇トレンドが見込めるとき」や「移動平均線と株価が大きく離れたとき」などと言われていますが、読み切ることはプロでも難しいです。
株の買い時の大まかな目安4つや初心者が知っておくべき投資の基本を紹介しますので、考え方を押さえておきましょう。
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株の買い時はあるの?おおまかな目安は4つ
株の買い時を見極めるにはチャート(株価の動き)や企業の決算情報などを確認する必要があります。具体的には以下4つが買い時の目安とされています。
- ほしい銘柄の上昇トレンドが見込めるとき
- 移動平均線と株価が大きく離れたとき
- 企業の決算をチェックして将来性が見込めるとき
- 出来高が急増したとき
ただし前提として、株の買い時や買うべき銘柄に絶対の正解はないと心に留めておきましょう。もし「絶対に儲かる」とアドバイスするプロがいたら、断定的判断を提供したとして明確な法律違反に当たります。
また無免許の人物による詐欺被害についても、金融庁が注意を呼びかけている事実があります。甘い言葉に惑わされるより、これまでの株取引の歴史から導き出された「傾向」を知ることが大切です。
1.ほしい銘柄の上昇トレンドが見込めるとき
チャート(株価の動き)において、ほしい銘柄が今後上がっていく兆候が見られる「上昇トレンド」が見込めるときは、株の買い時の1つとされています。株取引におけるトレンドとは、株価が右上に伸びているか、右下に伸びているか、横ばいを維持しているかなどの大局を表す動きのことを表すものです。
こうしたトレンドを読むには移動平均線に注目します。移動平均線とは、ある一定期間の株価の動きを平均化して表した線のことです。間隔は日や週、ときに分刻みでの平均を算出して分析します。例えば日足は5日や25日、75日などの間隔で結び、週足は13週や26週、52週などの間隔で結びます。
平均を取る期間によって短期・中期・長期に分類されるのが一般的です。
このように上昇トレンドを読んだり、過去のチャートの動きを確認したりなどで株価動向を予想することをテクニカル分析といいます。
また上昇トレンドと判断するには、株価の動きの特徴を捉えることも大切です。株価の動きはストレートに伸びることは少なく、常に細かく上下しています。そこで株価の安値(谷)もしくは高値(山)の頂点をそれぞれ線(トレンドライン)で結ぶことで、どの方向へ正しく伸びているかを確認できます。
3点以上の安値と安値を結んだとき、右上に進んでいる状態が上昇トレンドです。このタイミングが一般的に銘柄の買い時といわれています。
上昇トレンド中では、一番高い株価から一時的に下がる「押し目」の状態から反発したときに、以下2パターンの買い時が発生します。
- 直近の高値よりさらに高値を更新し、今後の伸びを期待できるタイミング
- 押し目の底から上昇してすぐのタイミング(押し目買い)
判断を行うには、直近の高値から水平に引いた線、もしくは高値と高値を結んだ線である「上値抵抗線(レジスタンスライン)」を基準にするとやりやすいです。
ただし「押し目待ちの押し目なし」という格言もあり、株価上昇の勢いが強い(値の下がりが予想しにくい)相場の場合は押し目が現れにくい傾向があります。また押し目のタイミングで買っても、その後本当に高値を更新するかどうかは未知数です。
なお直近の高値を更新できなくなってくると、その後の株価は上昇しにくいとされるのが一般的です。なおチャートの値が最高値またはそれに近い高値になっているところを天井と呼びます。
このように、テクニカル分析を行う上で移動平均線を読めるようになれば、株式市場におけるさまざまな局面を推測できるため、株の売り時のタイミングを見極めたり、より先の株価の動きを予想できたりします。
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2.移動平均線と株価が大きく離れたとき
移動平均線に対して株価が大きく下へ離れた「マイナス乖離」の状態が買い時の1つといわれています。移動平均線と株価が離れているマイナス乖離中は、これまでの平均的な株価の動きに比べて異常に安くなっている状態です。
なぜマイナス乖離が買い時とされるか、ですが、これは単純に「安くなったから買い時になった!」と判断されるわけではありません。反転上昇、つまり株価が以前の値に戻る動きを見せる可能性を期待できるためです。
株価は急落すると、株式市場にて「押し目だから買いだ」という投資家の考えが働きます。そして実際に買い注文が増え、結果として株価は上昇し、移動平均線の値に戻ろうとする値動きになるケースが見られます。
このように対象の銘柄が「売られすぎている(買われすぎている)」との投資家心理から、自律反発して株価が上向く(下向く)傾向が多いです。このことは逆張りとも呼ばれます。
また短期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上に交差して抜く「ゴールデンクロス」の状態も有名な買い時の1つといわれています。
ただし、株価の動きは企業業績や政治、法改正や経済界の動き、災害などといったファンダメンタルズ(外的要因)にも左右されます。
移動平均線と株価の大きな乖離に対し、焦って「今が買い時だ」と判断せず、チャートと一緒にファンダメンタルズをチェックすることをおすすめします。
3.企業の決算をチェックして将来性が見込めるとき
企業の決算をチェックした結果、「この企業は将来的に伸びる」と思えたら買い時と言えるでしょう。過去と現在の売上や利益を比較したり、使っているお金が借金の返済なのか投資なのかを見たりして、企業の将来性をチェックしましょう。
企業の業績や将来的な伸びを分析したいときは、決算短信や有価証券報告書など企業が公表しているIR情報をチェックすると以下の情報が得られます。
- どれくらい売上や利益、支出があったのか(前年以前と比較してどうか)
- どれくらい資産や負債を持っているのか
- どんな経営戦略を実施したのか
- 今後どのような事業戦略を持っているのか
- 企業価値に対して株価は割安であるか
企業の業績が株価に直結しやすい株取引において、企業価値を正しく分析することは買い時を判断するために重要です。なお、企業価値はファンダメンタルズ分析によって判断できます。
決算短信や有価証券報告書などのIR情報・財務情報は読み慣れるまで時間がかかりますが、読めるようになれば業界誌や株関係の書籍も理解しやすくなります。まずは、決算短信のサマリー情報にある財務三表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)の情報を読み解く練習をしてみましょう。
例えば2021年初期、ある日本の企業が長年かけて開発したアプリが爆発的人気を博したことをきっかけに、ただでさえ伸びていた株価が加速度的に上昇したという事例があります。
ファンダメンタルズ分析により、この企業が小規模ベンチャーだった頃から投資状況や開発アプリ、リリースするサービスの質などを分析して株を買っていれば、大きく利益を得られたでしょう。
4.出来高が急増したとき
株取引における出来高とは、株の取引量(枚数)のことを意味します。もし出来高に増加傾向が見られると、買い時と判断されることが多いです。なぜなら出来高=取引量が増加しているということは、「投資家から注目されている」「需要が伸びている」と推測できる、株価上昇を見込めるからです。
とくに出来高の増加と一緒に上昇トレンドが見られるときは、今後株価も継続して上がっていくと期待できるでしょう。
また「セリングクライマックス」と呼ばれるタイミングもあります。セリングクライマックスとは、株価に下落傾向が見られるとき、投資家たちが「これ以上持てない」と大量に売りに出した結果、さらに株価が暴落することです。
これは売りや下落が一段落するサインとも読めるため、その後の反発に期待ができます。ただし底の見極めの難しさや再暴落のリスクもあるので、一旦は方法論として心に留めておく程度がよいかもしれません。
初心者が株を買うときに気をつけたいポイント4つ
株式投資を始めたばかりの初心者やこれから始めようと考える人にとって、ときに気をつけたいポイントが4つあります。
- いろいろなところから情報を収集すること
- 複数の銘柄に分散して投資すること
- 自己資金以上の投資はしないこと(現物取引から)
- 長期的な目線や買い増しを意識すること
初心者が株を買うときに大切なのは「リスク回避の意識」です。事前に多くの情報を集めつつ、リスクを分散する投資のやり方や手持ち資金との相談を忘れないことが大切になります。それぞれを順番にみていきましょう。
1.いろいろなところから情報を収集すること
より多くより広く情報元を持ちつつ、正しい内容であるかを精査しながら情報収集を行いましょう。情報源としておすすめなのは次のとおりです。
- 経済系のニュースサイト
- 株式情報サイト
- 決算短信や有価証券報告書
成長株は投資家や金融業界人の間で話題になりやすく、そこから得た情報は買い時の判断材料になるでしょう。
また粉飾決算や従業員の不祥事などのコンプライアンス違反や、経営難による事業縮小・売却などのマイナス情報もいち早く仕入れられるようにアンテナを張り、「今後も上がる見込みが薄い株」を見分けられるようになりましょう。
不確定要素や世情の流れに株価が左右される株取引において、信頼できる情報をスピーディに手に入れることは基本中の基本です。
2.複数の銘柄を分散して投資すること
購入する株は1~2つに絞るのではなく、複数の銘柄に分散投資して手持ち資産の大きな損失や枯渇につながるリスクを下げることが大切です。
分散方法として考えられるのは次のとおりです。
- 違う業種に属する企業の株を買う
- 同じ業界の株式でも複数銘柄買う
- 国内・海外株をそれぞれ買う
ただしそこまで資金を投入しなかったり、複数の銘柄を管理するのが難しかったりする場合は、少額かつ安めの株に集中して買うスタイルもおすすめです。将来的にはアセットアロケーションやポートフォリオなどを意識した投資を行いましょう。
3.自己資金以上の投資はしないこと(現物取引から)
株取引では生活用資金以外の余剰資金を使い、自己資金以上を使って投資をしないことが鉄則です。とくにレバレッジ(預けた保証金以上の金額で取引する方法)ができる信用取引は、持っている現金以上の投資をして失敗した結果、追証による追加入金や生活苦に陥る危険があるためです。
初心者は、手持ちの現金と株式で取引する現物取引からスタートをおすすめします。また楽天ポイントやdポイントなどを使ったポイント投資から始めるのも1つの選択肢です。
とくに気をつけたいのは一括投資を行うことです。「生活費を一度にすべて株式に突っ込む!」などの方法は初心者・ベテランともにリスクが高すぎます。時期や銘柄を分散しながら少しずつ投資を行いましょう。
4.長期的な目線や買い増しを意識すること
短期的な取引が合わなかったり生活リズム的に不可能だったりする場合は、長期的な目線での投資をおすすめします。なぜなら、短期での株価の上げ下げを予想し続けることは初心者にとって困難だからです。
また前述の通り、初心者には「予算300万円をまとめて1回で投資に使う」という短期的な一括投資はおすすめできません。常に資金に余裕を持ちながらじっくり取り組むようにしましょう。
また初心者向けではないものの、あえて株価が下がったタイミングで買い増していく「ナンピン買い」の選択肢もあります。
株取引は短期での売買やデイトレードだけではありません。買い過ぎに注意しつつ、少額ずつの積立や買い増しから始めてみるのも立派な株式投資です。一括投資や積立投資の違いや特徴については、以下の記事でわかりやすく解説しています。
株の買い時をチェックできるおすすめの分析ツール
株の買い時をチェックしたいときは、各証券会社が提供している「企業分析ツール」の利用がおすすめです。有名な証券会社は自社の口座を開設してもらうと、株取引をサポートする企業分析ツールを提供してくれます。
企業分析ツールを使うことには次のようなメリットが挙げられます。
- 財務情報をもとにした各企業の成長性や割安性などをチェックできるので、将来的に伸びる銘柄やお買い得な株を分析しやすい
- 財務情報や取引数などをもとにしたランキング機能で目的の銘柄を探しやすい
- 過去数年間の企業業績も確認できるのでより成長性を分析しやすい
企業分析ツールはスマホアプリ版に対応するものも多いので、仕事の合間や通勤時間中、プライベートのすき間時間などでも確認できます。買い時のチェックに活用すると良いでしょう。
初心者はリスクを意識して買い時を見極めよう!
一般的に考えられる株の買い時としては、以下4つのタイミングがあるといわれています。
- ほしい銘柄が上昇トレンドでこれからも上がる見込みがあるとき
- 移動平均線と株価が大きく離れたマイナス乖離であるとき
- 決算短信や有価証券報告書などで見た企業の決算から将来性を見込めたとき
- 出来高が急増してかつ株価も上向いているとき
投資に絶対の正解はありませんが、大まかな目安として覚えておくと、買い時の判断で役に立つでしょう。この基本の買い時にプラスして「情報を集める」「分散投資や余剰資金で投資する」を行うなどのリスク回避を意識すれば、初心者でも投資にチャレンジできるはずです。避けられるリスクは回避しつつ、株取引を目指してみてください。
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このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
株式会社Fan
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