公益法人の資産運用ガイド|インフレに負けない財産管理の始め方

公益法人の資産運用ガイド|インフレに負けない財産管理の始め方

法人向け 資産運用

この記事のポイント

  • 預貯金や国債のみではインフレにより資産の「実質的な価値」が目減りする可能性があるため、事業の永続性を確保する「財産管理」として、インフレ率を上回る収益を目指す資産運用が必要である
  • 資産運用は、かつての旧指導監督基準に基づく「禁止」という誤解を解消し、短期的な「投機」ではなく、適切なリスク管理と説明責任を伴う「財産管理」として行うべきである
  • 運用開始にあたっては、組織的体制を確立するため、説明責任の土台となる「資産運用規程の策定」、「アセット・アロケーション(資産配分)」の決定、そして運用方針を理解し実行を支える「信頼できるパートナー」の選定という3つのステップが重要だ

公益法人の皆様は、公益事業の財源確保のため、安全性に重点を置いた資産管理・運用を行う重要な使命を担っておられます。

預貯金や国債の金利は上昇傾向ですが、一方では物価上昇(インフレ)も続いています。「預貯金や日本国債のみで」という従来策では、資産が実質的に目減りするリスクに直面しています。

しかし、特に資産管理型の法人様において「元本割れは許されない」という意識や説明責任の重さから、資産運用への見直しに二の足を踏む法人様も多いようです。

資産運用型の法人様においても、既存の運用方針がインフレや市場変化に対応できているか、不断の見直しが求められています。

本記事では、公益法人の資産運用に関する考え方や、運用の始め方、そして債券と投資信託を組み合わせるメリットを資産運用アドバイスの専門家(IFA)の視点で解説します。

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INDEX

公益法人の資産運用、「預貯金や日本国債だけ」になっていませんか?

預貯金や日本国債だけで財産管理を行っているという公益法人も多いのではないでしょうか。

預貯金・日本国債の金利は上昇傾向でも、インフレで進む「実質的な資産目減り」

近年、物価上昇が続いています。仮に物価が年2%上昇すれば、1億円の価値は1年後に実質約9800万円まで目減りします。

預貯金や日本国債の金利は上昇傾向ですが、それを上回る物価上昇が続けばどうでしょう。額面の元本は守れても、資産の「購買力(実質的な価値)」は失われます。

これが「実質的な元本割れ」のリスクです。

特に公益財団法人は、拠出された基本財産を運用することで事業の永続性を確保しています。

この基本財産の「実質的な価値」がインフレで目減りすることは、法人の根幹を揺るがす深刻なリスクとなります。

なぜ公益法人にこそ資産運用が必要なのか

公益法人は、事業の永続性が求められます。インフレで資産価値が目減りすれば、将来の事業規模の縮小につながりかねません。

だからこそ、インフレ率を上回る収益を目指す「資産運用」が、事業を守るための「財産管理」として必要なのです。

ここで以下のグラフをご覧ください。公益財団法人 公益法人協会が、174の公益法人に対しアンケートを行った結果です。

アンケート結果

出典 公益財団法人 公益法人協会 公益法人の資産運用に関するアンケート(2023年)P39 をもとに株式会社Fanが作成

2017年と2023年の比較から、2%以上の目標利回りを設定する公益法人が増加しており、これはインフレを上回る収益を目指す法人が増え、資産運用の考え方が積極化していることを示しています。

IFAが耳にした現場のジレンマ:資産運用はトップの承認なしでは進まない

とはいえ、目標利回りを高く設定したいと現場の担当者が考えていたとしても、そこには大きなジレンマがあるケースが多いのです。

現場の担当者は、値下がりリスクを負ってまで運用を進めた場合、もし損が出れば「個人の責任問題」に直面することが多いです。トップ層の明確な方針や承認なしに、ボトムアップで運用を進めることは、極めて高い個人的リスクを伴います。

このため、トップの皆様がインフレによる「実質的な資産の目減り」という「静かな危機」を深く理解し、未来の公益事業を守り、永続性を担保するという使命をもって英断しない限り、積極的な資産運用は進まないことが多いでしょう。

そのトップ層が株式や投資信託の運用に対して慎重になる理由としては、次の章で挙げる過去の指導監督基準に基づく「誤解」が背景にあることが少なくありません。まずはこの誤解を解消し、心理的な障壁を取り除く必要があります。

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【誤解解消】公益法人の資産運用は「禁止」されていない

株式や投資信託での運用に強い抵抗感を持つ公益法人様も少なくありません。背景には、過去の指導監督基準に基づく「誤解」があります。

いまだに残る「旧指導監督基準」の誤解

かつての旧指導監督基準では、基本財産の株式運用などは「原則として適当でない」とされていました。

この考え方が根強く残り、「公益法人はリスク運用をすべきでない」という誤解につながっています。

出典:内閣府|「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」について

内閣府も示す「適切なリスク管理下での運用」の必要性

現行制度に、旧指導監督基準は適用されません。内閣府の有識者会議資料でも、この誤解を取り除く必要性が指摘されています。

内閣府の「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」の資料では、旧制度の指導監督基準が「現在の公益法人に及ぶものではない」ことの周知が必要とされています。

また、資産運用(株式保有等)に関する公益法人認定法の制約をより具体的に明確化する方針も示されています。

出典:内閣府|資料5資産運用について

これは、行政が運用を一律に禁止しているのではなく、法人の自己責任による適切なリスク管理と説明責任を求めている表れです。

資産運用は「投機」ではなく「財産管理」

資産運用は「投機(ギャンブル)」とは本質が異なります。

  • 投機:短期的な価格変動を利用し、大きな利益を狙う行為。
  • 資産運用(投資):長期的な視点で資産を配分し、リスクを管理しながら安定的な収益の確保を目指す「財産管理」の手法。

公益法人に求められるのは、後者の「財産管理」としての資産運用です。

公益法人が資産運用を始めるための3つのステップ

では、どう始めればよいのでしょう。説明責任を果たすためにも、「手順を踏むこと」が不可欠です。

ステップ1:説明責任の土台となる「資産運用規程」を策定する

最も重要なステップです。場当たり的な運用を防ぎ、組織の方針を明確にする「資産運用規程」を定めましょう。

【規程に盛り込むべき主な項目】

  • 運用の目的(例:インフレヘッジ、財源の安定化)
  • 運用の対象資産(例:基本財産の一部、特定資産)
  • 資産配分の基本方針(リスクとリターンのバランス)
  • リスク管理体制(意思決定、チェック機能)
  • 報告体制(理事会・評議員会への報告ルール)

資産運用において、組織的な管理体制が確立されていないことによるリスクは、決して無視できません。

実際の公益法人の中にも、金融商品の購入をトップないし担当者独自の視点に基づき決定し、後々説明がつかなくなるケースがあります。

このリスクを回避し、評議員会や理事会に対して「なぜその運用をしているのか」を明確に説明し続ける土台こそが、「資産運用規程」なのです。

さらに、運用計画書等(基本方針書、ガイドライン、運用計画書など)を、資産運用規程とは別に作成し活用している法人も増えています。

ステップ2:法人の目的に合った「アセット・アロケーション(資産配分)」を決める

「何に投資するか」の前に、「どの資産に、どの割合で配分するか」を決めることが重要です。これをアセット・アロケーション(資産配分)と呼びます。

法人のリスク許容度に基づき、適切な配分を決定します。運用の成果の多くは、この資産配分で決まると言われています。

ステップ3:信頼できる「運用のパートナー」を選定する

公益法人では、資産運用専任の担当者がいることは稀で、運用業務は他の主要業務と兼務されているケースがほとんどです。そのような状況で資産運用の計画立案を行うのは難しいのではないでしょうか。

重要なのは、貴法人の運用方針を理解し、実行を支える信頼できるパートナーを選ぶことです。

運用の実行だけでなく、「規程づくり」や「資産配分」から相談できるパートナーを見つけることが成功の鍵です。

公益法人の資産運用:債券と投資信託の組み合わせがおすすめ

具体的な運用手段として、伝統的な「債券」と「投資信託」を組み合わせることが、公益法人の資産運用におすすめです。

債券の役割:計画的な収益(インカム)の確保

市場金利が上昇傾向にある現在、日本国債に加えて、先進国が発行する外国債券や社債は購入時の利回りが高まっています。

満期まで保有すれば、購入時に確定した利子(インカム)を計画的に受け取ることが期待できます。

価格変動リスクはありますが、株式投資と比較するとリスクを抑えた運用が可能となるため、資産の「守り」の中核となります。

投資信託の役割:インフレ対策としての「分散投資」

債券だけでは、インフレ率を上回る収益は難しい場合があります。

そこで、国内外の資産に幅広く「分散投資」できる投資信託が有効です。

投資信託なら資産運用の専門家に運用を任せられ、担当者様が市場の細かな動向に常に煩わされる必要はありません。

組み合わせるメリット:リスク管理と説明責任の両立

「計画的に運用できる債券」と「成長性・分散性の投資信託」の組み合わせは、法人のリスク許容度に応じたバランスの取れた運用を可能にします。

また、投資信託は運用方針や資産状況が「目論見書」などで開示され、透明性が高いのが特徴です。この透明性は、理事会などへの説明責任を果たす上でも大きなメリットです。

公益法人の資産運用、誰に相談すべきか?

では、「規程づくり」や「商品選び」は、誰に相談すればよいのでしょうか。

相談先の選択肢(銀行・証券会社・IFA)

主な相談先には、銀行、証券会社、そしてIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)があります。

  • 銀行・証券会社
    • 身近な相談先であり、グループ企業が提供する商品を含めた、包括的なサポートを受けられるメリットがあります。
    • 提案の対象となる商品は自社の取り扱いラインナップを軸とすることが一般的です。
  • IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)
    • 特定の金融機関に属さず、中立的な立場で資産運用のアドバイスを行う専門家です。

中立的な助言が期待できるIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)とは

IFAは Independent Financial Advisor の略です。特定の金融機関の営業方針に縛られることはありません。 貴法人の運用方針に基づき、市場の多くの商品から適切なものを提案できるのが強みです。

「規程づくり」や「長期的な資産配分」など、商品販売より上流の工程からサポートが必要な公益法人の皆様にとって、IFAは心強いパートナーとなり得ます。

公益法人の資産運用相談なら「投資信託相談プラザ」へ

私たち「投資信託相談プラザ」は、まさにこのIFAの立場で、公益法人の皆様の資産運用をサポートする資産運用アドバイスの専門家チームです。

「規程づくり」から「運用実行」まで中立的に伴走

私たちは特定の金融機関に属さない、中立的な視点が強みです。「何から手をつければいいか」という段階から、以下のプロセスを一貫してご支援します。

  1. 現状のヒアリングと課題整理
  2. 資産運用規程の策定サポート
  3. 法人の目的に沿った資産配分(アセット・アロケーション)のご提案
  4. 具体的な運用商品の選定と実行サポート
  5. 定期的な運用状況のモニタリングと報告

まずは無料相談で現状の課題をお聞かせください

公益法人の財産管理には、特有の配慮が必要です。まずは「投資信託相談プラザ」の無料相談で、貴法人の課題や不安をお聞かせください。 貴法人の特性を踏まえた運用の第一歩を、一緒に考えます。

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※令和7年7月時点

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まとめ:公益法人の資産運用は「規程整備」と資産運用アドバイスの「専門家選び」から

公益法人の資産運用は、インフレから法人の大切な資産を守り、公益目的事業を未来につなげるために不可欠な「財産管理」です。

過去の誤解を解き、手順を踏めば、リスクをコントロールしながら運用を進めることは難しくありません。

第一歩は、組織のルール「資産運用規程」の整備貴法人の立場に寄り添う資産運用アドバイスの「専門家」選びです。

「投資信託相談プラザ」が、貴法人の資産運用を中立的な立場でサポートいたします。

このコラムの執筆者

木村 晴彦

株式会社Fan IFA

大手証券会社にて個人富裕層、中小企業経営者等を中心に数多くの資産コンサルティングを経験、社内表彰多数。大手金融機関で実現できることに限界を感じ、お客様と長期に渡るお付き合いが可能なIFAに共感し転職を決意。現在はIFAとして、資産運用を始め、相続や事業承継・保険・終活など様々なご提案やセミナーも行いながら、幅広い顧客の支持を受け活動中。プライマリー・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)/AFP(日本FP協会認定)/終活カウンセラー(終活カウンセラー協会認定)/2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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