不動産売却の流れや方法、必要書類についてまとめました。また、高く売却するためのコツや売却にかかる諸費用・税金、売却時の注意点も紹介します。ぜひご覧になり、スムーズかつ高額での不動産売却を実現してください。
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不動産を売却する理由と注意点
不動産を売却する理由はさまざまです。理由によっては売却までの期間が限定されることや、仮住まいの費用などがかかることもあり、注意が必要です。
主な理由とそれぞれの注意点についてまとめました。計画的に売却を進めるためにも、ぜひチェックしておきましょう。
住み替え
現在お住まいの住宅を売却し、別の住宅に引っ越すための「住み替え」で、不動産を売却することがあります。より広い家に住み替えるケース、より安価な家に住み替えるケース、賃貸住宅に住みかえるケースなどもあります。
住み替えでは、現在居住中の住宅を売却するため、引っ越し代が必要です。また、売却から住み替え先の購入・賃貸までに時間が空くときは、仮住まいの費用も必要になります。仮住まいをするときは、現在の住宅から仮住まい、仮住まいから新居の2回引っ越しをおこないます。引っ越し費用も約2倍になる点に注意しましょう。
仮住まいの期間が短い場合は、短期賃貸マンションやホテルを検討できます。ただし、数ヶ月以上かかるときは、通常の賃貸物件を借りるほうが安価に済むかもしれません。
相続
相続した不動産を売却するケースもあります。相続したものの、将来的に住んだり賃貸物件として活用したりする予定がないときは、売却するほうが固定資産税を節約できます。
また、相続税は原則として現金で納めるため、支払いが難しいときも相続した不動産を売却することが必要です。相続税は、相続を知ってから10ヶ月以内に納付しなくてはいけません。納付に遅れることがないよう、売却手続きも早めに始めましょう。
なお、不動産を売却して納税資金に充てる際には、次のリスクが想定されます。
- すぐに売却できるか
- 相続人の意見は一致しているか
- 売却できない場合の納税資金があるのか
売却をスムーズにするためにも、納税資金対策や生前贈与などの準備が必要になります。ぜひ「不動産なんでも相談室」にご相談ください。
離婚・家族構成の変化
家族構成が変化するときも、不動産を売却することがあります。たとえば、離婚するときは、夫婦で築いた財産を分けることが必要です。離婚の理由として不貞行為などがあったときは、慰謝料の支払い・受け取りなども発生します。
居住している住宅を売却して現金化し、離婚時の清算費用として利用できるでしょう。居住中の住宅以外に別荘などの不動産があるときも、現金化が必要なときは早めに売却手続きをします。
なお、離婚の理由によっては、早めに不動産の売却を終わらせる必要が生じることもあるでしょう。急ぎのときには、後述する不動産会社による買取も検討してください。早ければ数日で現金化できることもあります。
また、離婚以外の理由によって家族構成が変化することもあります。たとえば親世帯と同居することになり、居住中の住宅を売却するケースなども少なくありません。
転勤
転勤により、居住中の住宅を売却するケースもあります。転勤はないだろうと考えて住宅を購入したものの、突然の辞令により転勤を余儀なくされることもあるでしょう。
将来的に現在の居住地に帰ってくることが明らかなときや、賃貸物件として運用していくときは売却する必要はないと考えられます。しかし、転勤先で住宅を購入するのであれば、早めに売却して現金化するほうが資金面での不安を軽減できます。
不動産売却の流れと期間
不動産売却は、以下の流れで進みます。
- 査定依頼
- 売却条件の決定
- 不動産会社と媒介契約を締結
- 販売活動
- 売買契約締結・引き渡し
査定依頼から媒介契約までに約1ヶ月、販売活動は約1~3ヶ月、売買契約の締結と引き渡しには約1~2ヶ月かかります。少なくとも約6ヶ月は見積もっておきましょう。販売活動や条件交渉に時間が長引くときは、さらに時間がかかることもあります。
1.査定依頼
まずは不動産会社に査定を依頼します。査定とは、おおよそどの程度の価格で売却できそうか見積もってもらうことです。いくつかの不動産会社から査定価格を出してもらうと、より相場に近い価格をつかみやすくなります。
査定には、机上査定と訪問査定の2つの種類があります。基本的にはどちらも無料です。机上査定は過去の売買データから売却できそうな価格を割り出すことです。不動産の情報を査定サイトに入力するだけで結果がわかることもあり、手間をかけずにおおよその価格を知りたいときに適しています。
しかし、管理状況や設備などは価格に反映されないため、実際の価格と大きな差が生じることもあります。より実際の売却価格に近い価格を知りたいときは、訪問査定がおすすめです。不動産会社の担当者に直接物件を見てもらい、管理状況や設備なども詳しくチェックして価格を割り出してもらいます。
2.売却条件の決定
売却を依頼したい不動産会社を決め、担当者と話し合って細かな売却条件を決めます。なお、査定価格と実際に不動産の売却を開始する「売出価格」とは異なります。査定価格が低すぎると思われる場合は、希望する価格を担当者に伝えて、高めの設定から売り出しましょう。
また、引き渡しの時期も決めておきます。住み替えなどの場合は、引き渡し時期を調整すれば仮住まいに暮らす必要がなくなるかもしれません。
3.不動産会社と媒介契約を締結
売却条件に納得したときは、不動産会社と正式に媒介契約(不動産会社の仲介により不動産を売却するための契約)を締結します。媒介契約には次の3つの種類があります。
不動産売却を依頼する本人も販売活動をする場合には、一般媒介契約か専任媒介契約がおすすめです。専属専任媒介契約でも依頼主本人が売却できますが、不動産会社に仲介手数料を支払う必要が生じます。
時間はかかってもよりよい条件で売却したい場合は、複数の不動産会社で購入希望者を探せる一般媒介契約がおすすめです。自分で購入希望者を探す自由度を残しつつ、不動産会社による積極的な販売活動を希望する場合は、専任媒介契約を選びましょう。
専属専任媒介契約なら1週間に1回以上は担当者が状況を報告する義務があるため、熱心に販売活動を実施してくれると期待できます。早めに売りたいときは、専属専任媒介契約を検討してみましょう。
4.販売活動
媒介契約締結後、いよいよ販売活動を開始します。販売活動自体は不動産会社が実施するため、依頼主自身はかかわる必要はありません。
ただし、購入希望者が現れたときは、内覧対応が必要です。美しく掃除しておくことで、物件の印象は大きく変わります。また、土地を売る場合は、雑草を抜き、ゴミを処分しておくほうが印象はよくなるでしょう。少しでもスムーズに売却するためにも、内覧前に見栄えをよくする工夫をしてください。
5.売買契約締結・引き渡し
購入希望者が購入する決意をしたときは、売買条件の交渉をおこないます。売買価格や入居時期などの条件がまとまったときは、売買契約を締結します。
なお、契約時に購入者から代金の一部を受け取り、後日残額を受け取ることが一般的です。全額受け取ると同時に鍵の引き渡しをおこないます。
また、鍵の引き渡しの際には、不動産の名義を購入者に移す「所有権移転登記」も必要です。所有権移転登記にかかる費用(登録免許税)は、通常、購入者が負担します。
不動産売却の方法
不動産売却の方法は、大きく次の3つに分けられます。
- 仲介
- 買取
- 個人売買
それぞれの特徴やメリット、デメリットを紹介します。
不動産会社による仲介
仲介とは、不動産購入者と依頼主(売却する側)との間に不動産会社が入り、スムーズな取引をサポートすることです。不動産会社に仲介手数料を支払うことが必要ですが、トラブルのない売却を実現しやすくなります。
また、仲介では、不動産会社が購入者を探すため、依頼主自身は販売活動をおこなう必要がありません。ただし、購入希望者が現れたときは内覧対応が必要です。購入希望者が多い場合やすぐに取引が成立しない場合は、何度も内覧対応が求められます。
不動産会社による買取
買取とは、不動産会社に買い取ってもらうことです。購入者が現れるのを待つ必要がないため、短期間で売却できます。また、仲介手数料が不要な点もメリットです。
ただし、相場よりも割安な価格になる傾向にあります。急いで現金が必要な場合を除き、高く売却するなら仲介のほうがよいでしょう。
個人売買
知り合いや親族などに購入希望者がいる場合は、個人的に売却できます。しかし、相場よりも低すぎる価格で売却したり、無償で不動産を渡したりするときには、贈与税が発生するため注意が必要です。
売却した不動産にトラブル(住宅設備が壊れている、シロアリが発生したなど)が生じたときや、代金が支払われないときなどには、弁償問題に発展するかもしれません。万が一に備えるためにも、不動産会社を通して売却することをおすすめします。
不動産売却の必要書類
不動産の売却を不動産会社に依頼するときには、書類提出を求められます。また、購入者が見つかり、売買契約を締結するときも、書類提出が必要です。一般的に必要とされる書類は以下をご覧ください。
上記以外の書類提出を求められることもあります。
不動産売却にかかる費用・税金
不動産を売却するときは、次の費用・税金がかかります。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
そのほかにも、住宅ローンを利用しているときなどは、別の費用や税金がかかることもあります。いずれも一括払いを求められることがあるため、事前に準備しておきましょう。
仲介手数料
不動産会社の仲介により不動産を売却するときは、売買契約の成立時に不動産会社に仲介手数料を支払います。なお、買取のときは仲介手数料は不要です。
仲介手数料は法律で上限額が決まっており、通常は上限額の支払いを求められます。
たとえば2,000万円で売却するときは、
2,000万円×3%+6万円+消費税(=66万円+消費税)
が仲介手数料の上限額となります。消費税率が10%なら、上限額は72万6,000円です。
印紙税
売買契約書を作成したときには、印紙税が必要です。印紙税額は売却価格によって異なります。ただし、紙の契約書を発行せずにオンライン上に作成したときは、印紙税は不要です。
参考:国税庁|No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
参考:国税庁|No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
譲渡所得税
売却により譲渡所得が生じたときは、譲渡所得税が課せられます。譲渡所得金額は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得金額=売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除
取得費とは、売却した不動産を購入するときにかかった費用のことで、購入代金や購入手数料などから減価償却費を差し引いて求めます。相続による取得など、取得費が明確ではないときは、売却価格の5%を取得費とします。
譲渡費用とは不動産の売却にかかった費用です。仲介手数料や売買契約書の印紙税などを含みます。
特別控除は、通常はありません。しかし、マイホームを売却したときには3,000万円を特別控除とするなど、一部のケースにおいては適用されます。
譲渡所得税は、保有期間が5年以下なら譲渡所得金額の39.63%、5年超のときは20.315%です。約2倍異なるため、譲渡所得税が高額になりそうなときは、5年を過ぎてから売却するほうがよいでしょう。
住宅ローン関連費用
住宅ローンが残っている不動産を売却するときは、売却によって得られた資金などを利用して、一括で返済します。金融機関によっては一括返済手数料がかかることもあるため、注意しましょう。
また、住宅ローン完済時には、抵当権抹消費用も必要です。抵当権抹消費用は1件あたり1,000円で、土地と建物なら2,000円になります。
そのほかの土地売却にかかる費用
隣地との境界が不明瞭な土地を売却するときには、測量費がかかることもあります。また、古家の状態によっては、解体して更地にするほうが売れやすくなることもあるため、解体費も見積もっておきましょう。
そのほかの建物売却にかかる費用
建物を売却するときには、状態によっては追加費用がかかることもあります。たとえば、内部を専門家に掃除してもらってから売却するときは、ハウスクリーニング費用が必要です。設備が壊れているときや、状態があまりよくなく、そのままでは売却が難しいときはリフォーム費用もかかります。
また、マイホームを売却する場合なら、引っ越し費用や仮住まいの家賃なども必要です。仮住まいについては、売却を依頼する不動産会社に相談してみましょう。
不動産売却の注意点
不動産売却を成功させるためにも、次の点に注意してください。
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
- 法律の規制を確認しておく
それぞれの注意点について解説します。
信頼できる不動産会社を選ぶ
仲介によって不動産を売却するときは、ひとつの不動産会社と約半年も付き合うことになります。安心して売却を進めるためにも、信頼できる不動産会社が望ましいでしょう。
信頼できる不動産会社かどうかは、次のポイントに注目することで、ある程度見分けることが可能です。
- 査定額の根拠を詳しく教えてくれる
- 地域での販売実績が豊富
- 依頼主の立場で売却のコツなどを教えてくれる
また、担当者との相性も重要なポイントです。あまり相性がよくないときや、希望を丁寧に聞いてもらえないときは、不動産会社に担当者の変更を願い出てください。
法律の規制を確認しておく
法律や条例などによる規制から、不動産が売れにくくなることもあります。売却したい不動産に適用される規制を事前に確認しておきましょう。
たとえば、建物が面している道路の幅が4m未満のときや、4m以上の幅の道路に接してはいるものの、接している長さが2m未満のときは再建築不可物件として扱われます。再建築不可物件は建て替えができないため、売れにくくなることもあります。
また、用途地域や建ぺい率、容積率などもチェックしておきましょう。いずれも建物の高さや広さ、商売をする場合は業種などを制限します。制限が厳しい場合には、売れにくくなることもあるため注意が必要です。
物件を高く売却するコツ
不動産を売却するなら、少しでも高値で取引を成立させたいものです。内覧対応を丁寧におこない、信頼できる実績のある不動産会社に仲介を依頼することでも、高く売却できることがあります。また、次のコツを実践することもおすすめです。
- 相場を調べてから売却条件を決める
- 早めに売り出す
- 売却時期を選ぶ
それぞれのコツについて解説します。
相場を調べてから売却条件を決める
不動産を売却するときには、いくつかの不動産会社に査定を依頼し、高額な査定額を提示してくれる不動産会社と媒介契約を結ぶことがあります。しかし、不動産会社によっては、媒介契約を締結するために、意図的に高額な査定額を提示することもあるため注意してください。
相場よりも高すぎる価格で売り出すと、なかなか購入希望者が現れず、何度も価格を下げて、結局はほかの不動産会社が提示した査定額を下回る価格で売却する可能性があります。査定額だけで不動産会社を決めるのではなく、販売実績や担当者の熱意なども考慮し、総合的に判断することが大切です。
また、相場をしっかりと調べておくことも重要なポイントです。査定を依頼する前に、不動産売買のポータルサイトなども参考に、ある程度の相場を調べておきましょう。相場に近い査定額を提示してくれる不動産会社なら、大幅な値下げをしなくても売却できると考えられます。
売出価格を相場よりも少々高めに設定することも、大切なポイントです。設定価格を下げることはできますが、上げることは難しいため、最初から相場どおりの価格に設定すると、高く販売する機会を逃すことになってしまいます。
早めに売り出す
売却したい時期よりも早めに売り出すことも大切なポイントです。急がずに余裕をもって売り出すことで、好条件で売れやすくなります。
ただし、時間に余裕があるからといって、あまりにも長い期間、物件を売りに出すのはおすすめできません。物件をチェックしている購入希望者に「売れ残っている」という印象を与えてしまい、「何か問題のある物件なのだろうか?」と不安に感じさせる可能性があります。
とりわけポータルサイトなどで販売するときは、物件が売り出された時期なども掲載されることがあります。売れ残りの印象を回避するためにも、時間をある程度はかけつつも、長引かないように注意してください。
売却時期を選ぶ
年度末は引っ越しなどで不動産の購入を考える方も多いため、成約価格が高額になる傾向にあります。売却時期が決まっていないのであれば、12月くらいから販売活動を始め、2月、3月の売却を目指すのもよいかもしれません。
また、年によっては、年度末以外にも相場が大きく動くことがあります。不動産ポータルサイトなどをこまめにチェックし、相場の変化から売り時を見極めてください。
時間に余裕を持って不動産売却を始めよう
売り急ぐと売却価格が低くなる傾向にあります。大切な資産を正当な価値で売却するためにも、時間に余裕を持って売却するようにしましょう。
ただし、あまりにも販売活動期間が長引くと、売れ残った印象を与えてしまうことがあります。相場を反映した妥当な査定額を提示し、なおかつ販売実績のある不動産会社を選び、スムーズな売却を目指してください。
また、売却する前に、売却にかかる諸費用や税金について把握することも大切なポイントです。諸費用や税金は基本的には一括で支払います。無理なく支払うためにも、あらかじめ資金を準備しておきましょう。
不動産売却に対する疑問は、ぜひ「不動産なんでも相談室」にご相談ください。不動産の専門家が、売却したい物件の状況にあわせた的確なアドバイスをご提供いたします。お気軽にお問い合わせください。
このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
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