この記事のポイント
- 宗教法人の資産運用は将来の安定的な活動のために重要だが、「なんとなく」始めるべきではない
- まず、法人の「規則」を確認し、役員会などで「何のために」「どの程度のリスクを許容し」「どのような方針で」運用するのかを明確に定めることがスタートライン
- その上で、宗教法人の法務・税務の特殊性を理解し、長期的な視点で資産保全を任せられる信頼できる専門家と連携することが、大切な資産を守り育てるための鍵となる
宗教法人が管理するお布施や寄付金といった大切な資産。その全てを普通預金に預けたままにしていませんか?
歴史的な低金利が続く現在、預金だけでは資産を増やすことは困難です。また、物価が上昇するインフレが進むと、資産の「実質的な価値」は時間とともに目減りしてしまいます。
将来の建物の大規模修繕、安定した布教活動の継続、職員の福利厚生の充実──。これらを将来にわたり維持・発展させるには、資産をインフレから「守り・育てる」視点が不可欠です。
しかし、宗教法人の資産運用には、特有の法務・税務の知識が求められます。
この記事では、宗教法人の資産運用に関する基礎知識、法律・税務上の注意点、そして具体的な手法について、要点を絞って分かりやすく解説します。
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INDEX
宗教法人が資産運用を行うことは可能か?
宗教法人法と資産運用の関係
結論から言えば、宗教法人も、その目的に反しない範囲で資産運用を行うことは可能です。
宗教法人法には資産運用を直接禁止する規定はありません。所轄庁へ提出する「財産目録」や「収支計算書」にも、預金だけでなく有価証券(株式や債券など)を記載する欄が設けられています。
これは、国も宗教法人が運用資産の保有を想定していることを示唆しているのではないでしょうか。
なぜ今、宗教法人に資産運用が必要なのか
資産運用が必要とされる理由は明確です。
- インフレによる資産価値の目減りリスク
- 例えば、物価が年2%上昇する場合、預金金利が0.2%では、資産の「購買力」は実質的に目減りします。
- 資産を守るためには、インフレ率を上回るリターンを目指す必要があります。
- 将来の費用(修繕、布教)への備え
- 建物の維持・修繕費用は高騰する傾向にあります。
- 将来必要な費用を計画的に準備するため、資産運用は有効な手段の一つです。
宗教法人の資産運用における4つの注意点
宗教法人の資産運用には、一般企業や個人とは異なる特有の注意点があります。
注意点1:法的・内部規程の整備
最も重要なのが、法的な手続きと内部での合意形成です。
✅法人の「規則」の確認
まずはご自身の法人の「規則(一般企業の定款にあたるもの)」を確認してください。資産の管理や運用に関する条項、特に基本財産の扱いについて、制限がないかを確認します。
✅役員会・評議員会の承認
運用の方針(目的、リスク許容度、方法)を明確にし、責任役員会の議決を経ることが必須です。規則に定めがあれば、評議員会の同意も必要になる場合があります。ガバナンスの観点から、議事録は必ず残してください。
注意点2:税務上の取り扱い(収益事業と非収益事業)
宗教法人の税務は特殊です。活動は、本来の宗教活動(非収益事業)と、それ以外の「収益事業」に区分されます。
⚠収益事業とみなされるケース
宗教法人は、お布施や寄付金など(非収益事業)には原則、法人税が課税されません。 しかし、資産運用であっても、その方法が「継続して」「事業場を設けて」行われるような、金融業や不動産貸付業などの「収益事業」に該当すると認定された場合、その収益に法人税が課税されます。
⚠非収益事業(非課税)との区分
一方、預貯金の利子や、一定の要件を満たす有価証券(株式や投資信託)の配当金・売却益(※)は、原則として収益事業とはみなされず、非課税とされています。
(※)株式や投資信託の運用益について:株式売買や投資信託の運用が、「継続的」かつ「大量」に行われ、実質的に「金融業」とみなされる規模・態様で行われる場合は、収益事業と認定されるリスクがあります。
税務上の判断は非常に複雑です。詳しくは国税庁のウェブサイトや、顧問税理士にご確認ください。
注意点3:「公益性」と「社会規範」への配慮
宗教法人は、一般企業以上に高い公益性や倫理性が社会から求められます。
たとえ収益性が高くても、過度に投機的な運用や、社会規範に反する(と見なされかねない)投資は、信者や社会からの信頼を損ねるリスクがあります。どのような資産に投資するか(投資しないか)という方針についても、法人の公益性に照らした検討が必要です。
注意点4:資産保全とリスク管理
大切な浄財を運用する上で、リスク管理は最優先事項です。
✅元本割れリスクの許容度
資産運用には「元本割れリスク(投資した元のお金が減る可能性)」が伴います。どの程度の損失までなら法人の運営に支障が出ないか、「リスク許容度」を内部で明確に定義してください。
✅分散投資の徹底
リスク管理の基本は「分散投資」です。「卵は一つのカゴに盛るな」という格言の通り、投資対象の資産(株式、債券など)、地域(国内、海外)、そして時間(一度に投資せず、時期を分ける)を分散させることが、安定運用には不可欠です。
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宗教法人に適した資産運用の具体的手法
リスク許容度や目的に応じ、一般的に検討される手法の要点を表にまとめます。
| 運用手法 | 概要と特徴 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| 預金・貯金 | 最も身近な方法。 短期資金の置き場所。 | ・元本が(ほぼ)保証 ・流動性が高い | ・インフレに弱い ・ほとんど増えない |
| 国債・地方債 | 国や自治体が発行する債券(借用書)。 | ・安全性が比較的高い ・満期まで持てば額面で償還される | ・金利が低い ・中途換金時に価格変動あり |
| 投資信託 | 専門家に資金を託し、分散投資してもらう仕組み。 | ・少額から分散投資が可能 ・運用のプロ(ファンドマネージャー)が運用 ・運用の手間がかからない | ・元本割れリスクあり ・信託報酬(手数料)がかかる |
| (参考) 株式・不動産 | 個別企業の株や不動産への直接投資。 | ・大きなリターンが期待できる | ・価格変動リスク大 ・専門知識が必要 ・「収益事業」認定の可能性が高い |
※上記は一般的な分類です。個別の商品性や税務判断は、必ず専門家へご確認ください。
特に「資産の保全」や「長期的な安定運用」を重視する宗教法人の場合、比較的価格変動の少ない債券や、ファンドマネージャーが分散投資を行う投資信託を、運用の中核に据えることが現実的な選択肢となります。
宗教法人の資産運用は誰に相談すべきか?
宗教法人の資産運用は、特有の法務・税務の知識が必要なため、相談先も慎重に選ぶ必要があります。どの相談先であっても、担当者が宗教法人の税務に精通しているとは限らない点に留意しましょう。
- 金融機関(銀行・証券会社)
- 身近な相談先です。
相談する前には、提供されるサービスの範囲をよく確認しましょう。
- 身近な相談先です。
- 税理士・公認会計士
- 税務の専門家であり、特に収益事業の区分については必須の相談相手です。
- ただし、資産運用や金融商品の専門家とは限りません。
- 独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)
- IFA(Independent Financial Advisor)とは、特定の金融機関に所属せず、独立・中立的な立場でアドバイスを行う専門家です。
- 金融機関の営業方針に縛られることなく、法人の「規則」や「運用方針」を深く理解した上で、適切な資産配分や商品のご提案が可能です。
まとめ:宗教法人の資産運用は、慎重な方針決定と専門家への相談が鍵
宗教法人の資産運用は、将来の安定的な活動のために重要ですが、「なんとなく」始めるべきではありません。
まず、法人の「規則」を確認し、役員会などで「何のために」「どの程度のリスクを許容し」「どのような方針で」運用するのかを明確に定めることがスタートラインです。
その上で、宗教法人の法務・税務の特殊性を理解し、長期的な視点で資産保全を任せられる信頼できる専門家と連携することが、大切な資産を守り育てるための鍵となります。
宗教法人の資産運用に関するお悩み、中立的な立場でサポートします
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このコラムの執筆者
木村 晴彦
株式会社Fan IFA
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大手証券会社にて個人富裕層、中小企業経営者等を中心に数多くの資産コンサルティングを経験、社内表彰多数。大手金融機関で実現できることに限界を感じ、お客様と長期に渡るお付き合いが可能なIFAに共感し転職を決意。現在はIFAとして、資産運用を始め、相続や事業承継・保険・終活など様々なご提案やセミナーも行いながら、幅広い顧客の支持を受け活動中。プライマリー・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)/AFP(日本FP協会認定)/終活カウンセラー(終活カウンセラー協会認定)/2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)