証券の相続の流れを確認|必要書類や期限、評価額の決め方も解説

証券の相続の流れを確認|必要書類や期限、評価額の決め方も解説

株式投資

株式など証券の相続にあたっては、相続人の証券口座開設が必要です。相続税の申告があるため、評価額の算出もしなければなりません。今回は、証券の相続の流れや必要書類のほか、評価額の出し方や相続税を節税するコツなどを解説します。

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株式や投資信託などの証券は、相続の対象です。相続するにあたって、相続人はそれらの名義変更をおこなう必要があります。まずは基本知識として証券の相続の流れ、証券の相続にあたって必要な書類や期限について解説します。

証券の相続の流れ

証券の相続における手続きの基本の流れは、以下のとおりです。

  1. 遺言書の捜索、相続財産および相続人の調査
  2. 遺産分割協議の開始
  3. 相続人の証券口座開設
  4. 相続手続き、相続税の申告

一つずつ順番に確認していきましょう。

1.遺言書の捜索、相続財産および相続人の調査

相続では遺言が優先されるため、遺言書の捜索をおこない、故人の相続に関する意向を確認します。また、相続財産をもれなく洗い出すとともに、戸籍を調べるなどして相続人を探す必要があります。

2.遺産分割協議の開始

遺言書が見つからなかったり、株式や投資信託など証券の分配に関する明記がなかったりした場合は、相続人同士で遺産分割協議をおこなわなければなりません。協議が成立したら、その内容を「遺産分割協議書」に記載し、相続人全員が実印を押します。

遺産分割協議では、故人が亡くなられた時点での財産の残高を明確にするために、証券会社が残高を証明する残高証明書を取得しておくことをおすすめします。残高への信頼性が高まるため、相続トラブルを未然に防ぐ効果を期待できるでしょう。

なお、遺産分割協議が決裂した場合は、家庭裁判所で遺産分割調停の申し立てをおこないます。

3.相続人の証券口座開設

相続人は、故人の株式や投資信託を預けている証券会社に、自分名義の口座を持つ必要があります。そのため、当該の証券会社に口座がない場合は、新たに開設しなければなりません

証券の相続では一般的に、故人名義の証券口座を解約し、証券を換金して相続人に払い戻しをすることはできません。そのため、故人の口座に預けられている証券を、一度相続人の口座に移す必要があるのです。相続人名義の口座に移した証券は、相続人の判断によって売却か継続保有されます。

4.相続手続き、相続税の申告

それぞれの財産を誰が相続するかが決まったら、財産ごとに相続手続きをします。株式の名義変更をおこなうためには、証券会社への連絡が必要です。

また、相続財産が、相続税の基礎控除額である「3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )」を超える場合は、相続税を支払わなければなりません。相続税の申告は、相続開始を知った日から10ヵ月以内におこないましょう。

必要な書類

証券のうち株式を相続するケースにおいて、必要な書類は以下のとおりです。

  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 株券(ある場合)
  • 株式の名義変更請求書
  • 亡くなった方の戸籍、除籍、原戸籍など
  • 相続人の戸籍謄本(全員分)
  • 相続人の印鑑証明書(全員分)

公正証書以外の遺言書は、家庭裁判所に提出して、検認の請求をしなければなりません。検認とは相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の内容を明確にして偽造を防ぐための手続きです。

印鑑証明書は遺産分割協議書に添付します。戸籍は証券の名義変更以外にも必要であるため、あらかじめ必要部数を取り寄せておきましょう

期限

相続税の申告の時効は基本的に5年で成立します。時効の起算日は、相続税の開始を知った日の翌日から10ヵ月を経過する日であるため、申告の義務がなくなるのは5年10ヵ月を過ぎたときです。

通常は相続開始から6ヵ月程度経過後、税務署から「相続税の申告に関するお尋ね」が郵送されてきます。それでも申告がなければ税務調査が入り、納税に関する督促状が送られると時効がリセットすることに注意しましょう。

なお、相続税の申告をしなければならないことを認識していなかった場合、時効は7年になります。

証券の相続にあたって遺産分割する方法2つ

証券の相続にあたって遺産分割する方法2つ

証券を相続する際には、以下の2つの方法があります。

  1. 銘柄のまま分割
  2. 売却し、換金して現金を分割

それぞれの方法を確認していきましょう。

1.銘柄のまま分割

証券は、売却していなくても、銘柄の状態のまま分割することができます。その場合、事前に誰がどの銘柄をいくつ相続するかを話し合っておきましょう。

それぞれの相続人に銘柄を分割した後に、銘柄や数量を変更することはできません。そのため、各人が納得できるように取り決めをしておくことが重要です。

2.売却し、換金して現金を分割

証券を売却し、現金にしてから分割する方法もあります。はじめに代表相続人の証券口座に移した後、売却および換金をします。比較的わかりやすく、公平な方法といえるでしょう。税金が控除される場合は、税引き後の金額を分割します。

なお、代表相続人の証券口座を「特定口座・源泉徴収あり」に設定しておけば、売却により利益が出た場合であっても確定申告は不要です。

【ケース別】証券の相続の手続き4つ

【ケース別】証券の相続の手続き4つ

ここからは、考えられる以下のケース別に証券のうち、株式の相続の手続き方法を解説していきます。

  1. 電子化前の株券の場合
  2. 非上場企業株の場合
  3. 口座のある証券会社がどこかわからない場合
  4. 相続を放棄する場合

一つずつ、手続き方法を見ていきましょう。

1.電子化前の株券の場合

故人が電子化前の株式の株券を保有していた場合、そのままでは相続することができません。管理している証券会社や信託銀行などに連絡し、相続手続きをおこなう必要があります。
株券は2009年に電子化されたため、紙の株券を保有していた方は証券口座を開設し、移管する手続きをおこないました。しかしなかには、電子化の手続きをしないまま相続が発生するケースもあります。紙の株券は、株式としての効力は失っていますが、権利はそのまま保全されています。

2.非上場企業株の場合

上場企業の株券は、証券会社や信託銀行で管理されている一方で、非上場企業の株券は、株式を発行した各企業が管理をおこなっていることに注意しましょう。
株式の相続におけるルールも、それぞれの企業で独自の内容を定めていることも少なくないため、各企業への連絡、確認が必要です。

3.口座のある証券会社がどこかわからない場合

株式を保有していた事実を把握していても、口座のある証券会社がどこかわからない場合、証券保管振替機構(ほふり)へ問い合わせをしましょう。ほふりに確認することで、口座を持っているのがどの証券会社なのか、把握ができます。

ほふりとは「社債、株式等の振替に関する法律」に基づく振替機関のことで、投資家が保有する株式などが証券会社から預けられ、集中保管をおこなっています。

4.相続を放棄する場合

相続の放棄をする場合には、相続開始を知ってから3ヵ月以内の、家庭裁判所への申し立てが必要です。通常、相続を放棄すると、株式だけでなくそれ以外のすべての財産の相続を放棄することになります

そのため、株式の相続のみを避け、それ以外の財産の相続を受けたい場合、遺産分割協議で他の相続人から同意を得る必要があります。

相続税の申告における証券の評価額

相続税の申告における証券の評価額

証券のうち株式の評価額は、原則、亡くなった日の終値が基準です。しかし、ほかにも株式の評価額を決める方法があることを理解しましょう。ここからは、相続税の申告にあたっての株式の評価額の決定方法と、相続税の節税方法を解説していきます。

4つのうちから最も安い価格を選択する

相続税の申告における株式の評価額は、基本的には亡くなった日、つまり相続開始日の終値が基準になります。終値とは、株式取引があった日の最後についた価格のことです。
しかし、以下の4つの価格から、最も安い価格を選択することもできます。

  1. 相続開始日の終値
  2. 相続開始日の月の取引日ごとの終値の平均値
  3. 相続開始日の月の前月の取引日ごとの終値の平均値
  4. 相続開始日の月の前々月の取引日ごとの終値の平均値

上記の4つのうちから安い価格を選択できるのは、株価は企業の業績や経済情勢に伴って変動するためです。上場株式の相続税評価額は、選択した株価に保有する株式数をかけて算出します。

代償金を支払う場合の株式の評価額の決め方に注意

相続人の一人が株式を銘柄のまま取得し、ほかの相続人には代償金を支払うというケースにおいては、株式の評価額を決める際に注意が必要です。

亡くなった後、株価が大きく変動しているような場合、評価額を決めるタイミングによっては不公平感が生じやすくなるためです。亡くなった日の株価を評価額とするのがもっともわかりやすく、納得感を得られやすいといえるでしょう。

相続税の節税方法

証券の相続税の節税方法としては、以下が挙げられます。

  • 生前贈与の活用
  • 自社株の評価額を下げる
  • 発行会社への株式譲渡の課税の特例、非上場株式の納税猶予・免除の特例などの活用

現金と同様に、株式などの証券も贈与者一人につき年間110万円までは非課税とされているため、生前に少しずつ贈与することで相続税対策ができます。ただし、被相続人が亡くなる3年前の贈与(※)は、年間110万円以下でも相続税の課税対象となることを覚えておきましょう。

※2023年の税制改正でこの被相続人の死亡前3年という持ち戻しの期間が、2024年以降の贈与から7年に延長されます。

また、会社のオーナーである場合、配当や利益などの引き下げによって株価を下げる節税対策もあります。そのほか、非上場株式を発行会社に譲渡する際の課税の特例や、非上場株式の納税猶予および免除の特例などの活用も相続税の節税対策として有効といえるでしょう。

配当金の相続のポイント

配当金の相続のポイント

配当金とは、企業が株主に対して利益の一部を還元するために支払われるお金のことです。配当金を未受領のまま相続が発生する場合があるため、その場合は配当金についても相続手続きをおこないます。

配当金の受け取りには以下の3つの方法があり、故人が生前、どの方法を選択していたかによって、相続の手続き方法が異なります。

  • 証券口座での受け取り
  • 銀行口座での受け取り
  • 配当金領収書による受け取り

配当金を証券口座で受け取っていた場合、株式の移管手続きと一緒に配当金の相続手続きもおこないましょう。また、銀行口座での受け取りだった場合、亡くなったタイミングで口座が凍結され入出金ができなくなるため、新たに受け取り口座を指定する必要があります。

配当金領収書による受け取りとは、配当金を管理する信託銀行などから送付される配当金領収書をゆうちょ銀行に持参し、受け取る方法のことです。亡くなった後、証券会社から相続による株主変更の連絡が入るまで、信託銀行は従来どおり故人に配当金領収書を送ります。
そのため、相続人はゆうちょ銀行で、相続に関する書類を提出し、配当金を受け取りましょう。

証券の相続の流れや評価額の出し方を確認しよう

証券の相続の流れや評価額の出し方を確認しよう

株式や投資信託などの証券を相続する際は、故人の財産や相続人を洗い出した後に遺産分割協議をおこないます。また、証券を相続するために、相続人は故人の証券が預けられていた証券会社に、自分名義の口座を開設する必要があることをおさえておきましょう。

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このコラムの執筆者

MONEY HUB PLUS 編集部

株式会社Fan

未来につながる投資情報メディア「Money Hub Plus(マネハブ)」の編集部です。
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