ゴールベース運用とは、将来の目標から逆算して資産運用を行う方法です。米国では1990年代の半ばあたりから普及し始め、今後は日本の金融業界にも広まっていくと考えられています。ゴールベース運用の意味や、資産運用における必要性などを理解しておきましょう。
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ゴールベース運用とは?
ゴールベース運用とは、米国で浸透している資産管理の手法の一つです。別名「ゴールベース・アプローチ」といわれることもあります。
個々の目標から逆算して資産を管理し、運用成績よりも目標の達成が重視されるのが特徴です。ここでは、ゴールベース運用の基本的な考え方や、マーケットベース運用との違いについて解説します。
目標から逆算する資産管理方法のこと
ゴールベース運用とは、個々の目標から逆算して資産を管理する手法のことです。設定するゴールは金銭的な目標に限定されず、子どもの教育や事業の承継、社会貢献なども含まれます。
ゴールベース運用の根底には、「顧客の人生に伴走すること」という考え方があります。将来的な目標を具体的な数字に落とし込み、目標の実現に必要な資金を逆算したうえで、資産の運用方針や支出のコントロール方法を考えるのが特徴です。
運用成績よりも目標達成が重視される
ゴールベース運用では、運用成績よりも目標達成が重視されます。ゴールベース運用の基本的なスタンスは、ゴール達成に向けた中長期の資産管理です。アドバイザーは定期的にフォローアップ面談を実施し、ゴール達成までの進捗状況に応じて運用方針を見直します。
つまり、その時点での運用成績を見るのではなく、「目標達成の確率が高いか・低いか」「達成率を上げるためには何が必要か」を重視してアドバイスするのが特徴です。
ゴールベース運用は米国で浸透している
ゴールベース運用は、金融先進国の米国で浸透している手法です。1990年代の半ばあたりから広がりを見せ始め、アドバイザーが顧客との信頼関係を築いていく中で、中長期的にアドバイスを行うスタイルが主流となっていきました。
野村総合研究所が公表した資料によると、米国では8割以上の対面アドバイザーがゴールベース運用を取り入れていることがわかっています。
参照元:野村総合研究所 米国投資商品調査報告書
マーケットベース運用との違い
ゴールベース運用と対照的な手法として、マーケットベース運用が挙げられます。マーケットベース運用とは、市場動向に基づいて相場の動きを予測し、短中期的に投資や売買を行う手法です。ゴールベース運用は目標に向かって中長期で運用するスタイルのため、アプローチの仕方や投資の期間が大きく異なります。
マーケットベース運用は長期的に運用するコア資産には向いていませんが、リスクを取りながらリターンを追求するサテライト資産には適した考え方です。一方で、相場が予測どおりに動かなかった場合は大きな損失を抱えるリスクがあります。
ゴールベース運用の鍵はアドバイザーの存在
ゴールベース運用の鍵となるのは、資産管理について助言するアドバイザーの存在です。アドバイザーは顧客ごとの目標に寄り添い、ゴールの実現に向けてベストなアプローチ方法を提案します。
特に長期的な運用では投資判断を誤るケースが多いため、アドバイザーが果たす役割は大きいでしょう。ここでは、ゴールベース運用におけるアドバイザーの役割と重要性について解説します。
ゴールベース運用におけるアドバイザーの役割
ゴールベース運用におけるアドバイザーの役割は、顧客のライフプランをヒアリングしてゴールを設定し、目標達成に向けて金融面のサポートを行うことです。アドバイザーは「投資のやり方を提案する人」と位置付けられがちですが、運用方法の提案は業務の一部でしかありません。
アドバイザーの本領が発揮されるのは、顧客ごとのゴールを設定する場面です。数十年後の目標を設定しようとしても、具体的にイメージするのは難しいでしょう。想像するのが難しい部分も掘り下げ、課題解決につながる目標を顧客と一緒に考えることも、ゴールベース運用におけるアドバイザーの重要な役割です。
資産運用においてアドバイザーが重要な理由
米国では「人生には医師・弁護士・ファイナンシャルアドバイザーが不可欠」といわれるほど、アドバイザーの重要性が高いと考えられています。投資の基本は長期分散投資や積立投資ですが、これらを長期的に運用し続けるのは簡単なことではありません。
なぜなら、保有している間に相場が上がったり下がったりすると、つい売却してしまうケースが多いためです。例えば、積立投資で株価が大きく下落した場合、保有しているのが不安になって手放してしまうこともあるでしょう。
長期的に運用を続けるためには、客観的な視点をもつアドバイザーの存在が欠かせません。アドバイザーに助言をもらうことで全体最適が可能となり、資産運用を含む金融面を包括的に管理できます。
長期的な運用の継続およびリスクの軽減においては、アドバイザーが重要な鍵を握るといっても過言ではないでしょう。
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ゴールベース運用の必要性と今後の動向
ここまで、ゴールベース運用の仕組みやアドバイザーの役割などを説明しました。アプローチの特徴はわかったものの、なぜゴールベース運用が必要とされるのかが気になる方もいるでしょう。
また、ゴールベース運用は主に米国で浸透している手法ですが、日本でも少しずつ広がりを見せています。ここでは、ゴールベース運用が必要とされる2つの理由や、日本における今後の動向について解説します。
ゴールベース運用が必要とされる理由2つ
ゴールベース運用が必要とされる理由は、主に以下の2つです。
- 資産運用のリスクを最適化できる
- 資産運用を長期的に続けられる
目標を設定してから資産運用の方針を考えることで、リスクの最適化や長期的な運用の継続が期待できます。ゴールベース運用の理解を深めるためにも、ゴールベース運用の必要性や目標設定の重要性を知っておきましょう。
①資産運用のリスクを最適化できる
ゴールベース運用によって目標設定することは、資産運用におけるリスクの最適化につながります。資産運用する際は、「老後資金を確保する」「教育費を準備する」などの目的を決めることが大切です。
なぜなら、最終的なゴールを決めずに資産運用をすると、リスク許容度を超えるハイリスクな商品を選んでしまう可能性があるためです。または、長期的に運用できる資金であるにもかかわらず、リスクが大幅に低い商品を運用することもあります。
このように、目的の定まっていない状態では適切なリスクでの資産運用ができません。高すぎず低すぎないリスクで運用するためには、ゴールベース運用の考え方に基づき、設定した目標に必要な利回りを把握したうえで運用するのが有効です。
②資産運用を長期的に続けられる
資産運用を長期的に続けられることも、ゴールベース運用が必要とされる理由です。長期的に資産運用する際は、短期的な値動きに左右されて売買を繰り返したり、衝動買いによって資産運用を中断したりすることがあるでしょう。
その点、ゴールベース運用は目標に向かって資産を管理するスタイルのため、値動きなどに影響されるリスクを抑えられます。長期的かつ安定的な運用を目指すのであれば、ゴールベース運用によって目標を明確にイメージし、何のために資産運用するかを明らかにすることが重要です。
ゴールベース運用の今後の動向
日本における金融機関のあり方は少しずつ変化しており、今後はゴールベース運用が普及していくと考えられています。これまでの日本では、貯蓄から投資に目を向けることを促進する動きはあったものの、株式や債券などの直接金融は大きく広まっていませんでした。
しかし、昨今ではロボアドバイザーやラップ口座が急速な広がりを見せ始めています。これらのサービスは、顧客のリスク許容度などに応じてポートフォリオを提供するのが特徴です。
また、売買取引の仲介を担うブローカレッジ営業から、顧客ごとに資産運用をコンサルティングするスタイルに移行するなど、金融機関のあり方にも変化が見られます。ゴールベース運用が普及する下地が徐々に整いつつあるため、今後はさらなる拡大が見込まれるでしょう。
ゴールベース運用の意味を理解しておこう
ゴールベース運用とは、将来的な目標から逆算して資産管理を行う手法です。ゴールに向かう過程での運用成績よりも、最終的に目標を達成できるかどうかが重視されます。
米国ではすでに普及しているアプローチ方法ですが、日本では広く認知されているとはいえません。とはいえ、今後は日本でもゴールベース運用の拡大が見込まれるため、正しい意味や必要性などを理解しておくことが大切です。
このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
株式会社Fan
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