社会福祉法人の資産運用ガイド|基礎知識と始め方を解説

社会福祉法人の資産運用ガイド|基礎知識と始め方を解説

法人向け 資産運用

この記事のポイント

  • 社会福祉法人の資産運用で最も重要なのは、「なぜ運用するのか」「どの資金を対象とするか」「許容するリスクはどこまでか」を明確にし、「資産運用規程」として文書化すること。
  • また、担当者任せではない、組織的な運用体制を構築することが必須。
  • 一つの資産に偏らず、複数の資産を組み合わせる「ポートフォリオ(資産の組み合わせ)」を構築し、実行しよう。
  • 定期的なモニタリングと報告も忘れないようにしよう。

「法人の大切な資金を、インフレ(物価上昇)からどう守ればよいか?」
「最近は日本国債の金利も上がってきたが、資産運用にどう活かせばいいのか?」

社会福祉法人の理事長様や財務担当者様から、このようなご相談が増えています。

社会福祉法人はその公益性から、資産運用には慎重さが求められます。しかし、物価が上昇を続ける現代において、「何もしない(預貯金に預けたまま)」こと自体が、資産の価値を目減りさせるリスクになっています。

この記事では、金融のプロの視点から、社会福祉法人の資産運用に関する基礎知識、守るべきルール、そして金利上昇期を踏まえた具体的な選択肢をシンプルに解説します。

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社会福祉法人の資産運用はなぜ必要? 2つの理由

なぜ今、社会福祉法人に資産運用が必要なのでしょうか。理由は大きく2つあります。

1. インフレによる「資産の目減り」を防ぐため

最大の理由は「インフレ(物価上昇)」です。 例えば、物価が年2%上昇すると、現在1,000万円で買えたものが、1年後には1,020万円なければ買えなくなります。預貯金の額面は1,000万円のままでも、その「購買力(実質的な価値)」は失われていきます。

大切な資産を「守る」ためには、インフレ率を上回るリターン(利子や収益)を目指す運用が必要です。

2. 将来の事業継続・拡大に備えるため

社会福祉法人は、将来にわたって安定的に事業を継続する責務があります。

  • 施設の老朽化に伴う大規模修繕
  • 新たな福祉ニーズに対応するための新規事業
  • 優秀な人材を確保・維持するための処遇改善

これらの資金を準備するため、余裕資金をただ寝かせておくのではなく、適切に運用し、効率的に備える必要性が高まっています。

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社会福祉法人の資産運用、知っておくべき基本ルール

社会福祉法人の資産運用は、一般的な企業とは異なり、社会福祉法や関連通知、会計基準に基づいた厳格なルールの上で行う必要があります。

運用できる資金とできない資金

  • 運用対象となり得る資金:
    • 将来の特定の目的のために積み立てた「積立金」
    • 日々の事業活動から生じた「余裕資金(繰越活動増減差額の一部)」
  • 運用対象とすべきでない資金:
    • 事業継続に不可欠な「基本財産」(土地、建物など)
    • 日々の支払いに必要な「運転資金」

遵守すべき「安全性」「確実性」の原則

社会福祉法人の資産運用において、法人の存続を脅かすような、投機的な運用(短期売買やハイリスク商品への集中投資など)は厳に慎む必要があります。

以下 社会福祉法人新会計基準についてより引用

「資産の管理運用については、平成19年度の通知改正により、法人の基本財産以外の財産については、安全、確実な方法で行うことが望ましいとしつつ、株式投資又は株式を含む投資信託等による管理運用を認めることとしたところである。」

出典 厚生労働省 社会・援護局関係主管課長会議資料福祉基盤課重点事項3(1)社会福祉法人新会計基準について

重要なのは、「なぜ運用するのか」「どのようなリスクがあるのか」を理事が理解し、説明責任を果たせる状態にしておくことです。

資産運用で考慮すべき2つのリスク

資産運用を考える際、「元本割れリスク」だけを恐れるのは十分ではありません。社会福祉法人こそ、2つのリスクを天秤にかける必要があります。

  1. インフレリスク(何もしないリスク)
    • 内容:物価の上昇により、保有する現金の「実質的な価値」が目減りするリスク
    • 対策:インフレ率を上回るリターンを目指す資産運用を行う
  2. 価格変動リスク(運用するリスク)
    • 内容:株式や投資信託などの価格が変動し、元本割れ(投資した金額より少なくなる)する可能性
    • 対策:「長期・積立・分散」の原則を守り、リスクを管理する

資産の保全にこだわるあまり円預金のみに偏ることは、インフレリスクに対して無防備であるとも言えます。社会福祉法人の資産運用においては、この2つのリスクのバランスを適切に取ることが必要となります。

社会福祉法人の資産運用、主な選択肢

金利が上昇傾向にある現在、社会福祉法人の選択肢は「預貯金」だけではありません。

選択肢1:日本国債(特に長期債)

日本銀行の政策変更に伴い、日本国債の利回りは上昇傾向にあります(※2025年10月現在)。特に、償還(満期)までの期間が長い「長期債」や「超長期債」は、有力な選択肢となり得ます。

  • メリット:
    • 利回りの確保:時期にもよりますが、超低金利時代と比べて利回りが上昇しており、インフレ対策として機能し得る水準に。
    • 信用リスクの低さ:日本国が発行体であるため、満期まで保有した場合に元本や利子が支払われなくなる信用リスク(デフォルトリスク)は極めて低い。
  • デメリット:
    • 中途売却時の価格変動:満期より前に売却(換金)する場合、その時の市場金利が上昇していると、債券価格は下落(元本割れ)するリスクがある。
    • 長期の資金拘束:30年債などは、その名の通り資金が長期間拘束される。

選択肢2:債券

国や企業などがお金を借りるために発行する証券であり、海外の企業や政府が発行する外国債券(外債)も含まれます。

  • メリット
    • 高い利回りの追求:日本国債よりも信用リスクが高い分、その見返りとして高い利回りが期待できる。特に外債は高金利国の金利を取り込む効果が期待できる。
    • 分散投資の効果:外債は国内金利とは異なる動きをするため、円建て資産への偏りを軽減し、リスク分散に役立つ。
  • デメリット:
    • 信用リスク(デフォルトリスク):発行体企業の経営悪化や倒産により、元本や利子が支払われないリスクがある(外債はカントリーリスクも伴います)。
    • 為替変動リスク(外債のみ):外貨建て資産であるため、円高が進行すると、円換算したときの手取り額が目減りするリスクがある。

IFAの実例紹介

ある社会福祉法人の例をご紹介します。

この社会福祉法人の理事長様は、当初日本国債中心の運用を検討されていました。しかし、ヒアリングでインフレや日米金利差などの経済情勢を説明し、米国債の利回りが円建て債券と比べて明確に高かったことから、米国債の買い付けを積極的に検討する意向に転換されました。

■「ラダー型運用」の提案

理事長様から、運用可能な積立金であっても、将来的な施設運営のための急な支出や、計画的な資金繰りへの影響について懸念があることを改めてヒアリングしました。そこで、高い利回りを追求しつつ、流動性の確保とリスク分散を両立させるために、ラダー型運用(はしご型運用)に近い提案を行いました。

具体的には、投資資金を4つに分け、満期の異なる米国債4銘柄に分散投資する設計です。この方法により、順次、満期資金が償還されるため、以下のようなメリットが期待できます。

  • 資金繰りの柔軟性: 戻った満期資金をその年度の施設維持・運営費に充当したり、その時の金利情勢に応じて再投資したりと、柔軟な対応が可能。
  • 金利変動リスクの分散: 一度に全額投資するのではなく、期間を分けることで、金利が低いタイミングで全額を投資してしまうリスクを回避できる。

この提案が決め手となり、最終的にご成約に至りました。

選択肢3:投資信託(分散投資)

債券のみの運用に加え、さらにリスクを分散したいというニーズに応える有効な選択肢が「投資信託」です。

投資信託(ファンド)とは?:多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家が国内外の株式や債券などに「分散投資」する金融商品です。

  • メリット:
    • 手軽に分散投資が可能:1つの商品で、複数の国や資産(株式・債券など)に分散投資ができる。
    • 専門家による運用:日々の運用は運用の専門家が行うため、担当者が直接市場を分析する必要がない。
  • デメリット:
    • 元本保証がない:運用成果次第で価格が変動し、元本割れするリスクがある。
    • コストがかかる:信託報酬(保有中にかかる手数料)が発生する。

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避けるべきハイリスクな運用

法人の公益性を考えると、以下のような運用は避けるべきです。

  • 特定の個別企業への株式集中投資
  • FX(外国為替証拠金取引)やデリバティブ(金融派生商品)

社会福祉法人が資産運用を始める4つのステップ

資産運用を「なんとなく」始めてはいけません。以下のステップを踏み、組織としての合意形成とルールの明確化が不可欠です。

ステップ1:運用目的と運用規程の策定

最も重要なステップです。「なぜ運用するのか」「どの資金を対象とするか」「許容するリスクはどこまでか」を明確にし、「資産運用規程」として文書化します。

ステップ2:理事会での議論と承認

策定した規程案を理事会で十分に議論し、組織としての正式な承認を得ます。これにより、担当者任せではない、組織的な運用体制を構築します。

ステップ3:運用商品の選定と実行

規程に基づき、具体的な金融商品(日本国債や投資信託など)を選定します。一つの資産に偏らず、複数の資産を組み合わせる「ポートフォリオ(資産の組み合わせ)」を構築し、実行します。

ステップ4:定期的なモニタリングと報告

運用を開始したら、最低でも半期に一度は運用状況を確認(モニタリング)し、理事会などに報告します。状況に応じて見直しも検討します。

資産運用の相談先は?パートナー選びの注意点

これらのステップを法人内だけで行うのは困難な場合も多いでしょう。専門家への相談がおすすめですが、相談先選びには注意が必要です。

  • 銀行・証券会社
    • 身近な相談先であり、グループ企業が提供する商品を含めた、包括的なサポートを受けられるメリットがある。
    • 提案の対象となる商品は自社の取り扱いラインナップを軸とすることが一般的。
  • IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)
    • 特定の金融機関に属さず、中立的な立場で資産運用のアドバイスを行う専門家。

重要なのは、手数料体系が明確で、法人の目的を理解し、長期的に伴走してくれるパートナーを選ぶことです。

社会福祉法人の資産運用は「投資信託相談プラザ」へ

社会福祉法人の資産運用は、「公益性」と「インフレ対策」という、高度なバランス感覚が求められます。

特定の金融機関の意向に左右されず、「本当に法人のためになる運用は何か」を一緒に考えるパートナーが必要です。

私たちが中立的な立場からサポートします

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まとめ:将来を見据えた社会福祉法人の資産運用

社会福祉法人の資産運用は、もはや「余裕があればやる」ものではなく、インフレから法人の資産価値を守り、将来にわたって安定的な事業を継続するために不可欠な「経営戦略」の一つです。

金利が上昇してきた現在は、日本国債という選択肢も現実味を帯びています。「預貯金」「日本国債」「債券」「投資信託」を適切に組み合わせ、リスクを管理しながら資産を守り育てることが重要です。

このコラムの執筆者

木村 晴彦

株式会社Fan IFA

大手証券会社にて個人富裕層、中小企業経営者等を中心に数多くの資産コンサルティングを経験、社内表彰多数。大手金融機関で実現できることに限界を感じ、お客様と長期に渡るお付き合いが可能なIFAに共感し転職を決意。現在はIFAとして、資産運用を始め、相続や事業承継・保険・終活など様々なご提案やセミナーも行いながら、幅広い顧客の支持を受け活動中。プライマリー・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)/AFP(日本FP協会認定)/終活カウンセラー(終活カウンセラー協会認定)/2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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