外貨建て債券とは日本円以外の通貨で代金の支払い、利子および償還金の受け取りが行われる債券のことです(円貨決済型を除きます。以下同じ。)。メリットとしては相対的に高い利回りを期待できることや、分散投資となる点などが挙げられます。今回は外貨建て債券の特徴やメリット、リスクを解説します。
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外貨建て債券の概要
外貨建て債券とは、払い込みや利払い、償還金の支払いがすべて外貨で行われる債券のことです。国内債券では、多くの利息の受け取りは期待できない状況にあります。しかし、外貨建て債券であれば海外の高い金利を享受できるほか、為替差益を得られる可能性もあるでしょう。
ちなみに債券とは、簡単にいうと国や地方公共団体、企業などが資金を調達するために発行する借用証書のことです。投資家は債券への投資によって、発行体に資金を融資していることになります。
一般的には発行体か通貨、あるいは発行場所のいずれかが海外の債券は「外債」と呼ばれます。このうち払い込みや利払い、償還金の支払いがすべて外貨で行われるものを外貨建て債券ということを押さえておきましょう。
外貨建て債券は途中で売却する際や満期償還時に、為替相場の影響を受けることが特徴です。
例えば、外貨建て債券を1ドル100円で10,000ドル購入すると、満期償還のタイミングで1ドル120円の円安になっていれば20万円の為替差益となります。一方、1ドル80円の円高の状況であれば20万円の為替差損となります。
発行体による分類
発行体とは、資金を調達するために債券を発行する主体のことで、国や地方公共団体、企業などさまざまです。
発行体が破綻すると、債券はデフォルト(債務不履行)になります。発行体によって信用リスクが異なり、リスクを示すものに発行体格付けがあります。発行体による分類は、下記のとおりです。
利払いによる分類
利払いの有無によって、大きく「利付債」と「割引債」の2つに分類されます。利付債は発行から償還までの期間中、利子が支払われるものです。また、償還時には事前に決められた額面金額で戻ってきます。
利付債には、満期までの利子があらかじめ決められている「固定利付債」と、利子が変動する「変動利付債」の2種類があります。
一方、割引債は、利率が低く設定されている分、額面金額よりも低い価格で発行され、償還時に額面どおりの金額で償還される債券です。利子と償還差益を受け取ることができる点が特徴です。
割引債にもいくつかの種類があり、例えば、ディスカウント債は利率が低い代わりに額面金額よりも低い価格で発行され、利子と償還差益を両方とも受け取れます。
ゼロクーポン債は、ディスカウント債のうち期間中の利子の支払いがないものを指します。額面金額よりも低い金額で発行され、額面どおりの金額で償還されるため、償還時に利子相当分も合わせて受け取ることが可能です。
ゼロクーポン債の一種で、利付債の元本と利子部分を分け、それぞれをゼロクーポン債として販売されているストリップス債もあります。
外貨建て債券の3つのメリット
外貨建て債券のメリットには、次の3つが挙げられます。
- 金利が高い傾向にある
- 円安時には為替差益を得られる
- 分散投資によりリスク分散ができる
メリットの内容を、一つずつ確認していきましょう。
1.金利が高い傾向にある
外貨建て債券は、低金利が続く日本に比べ、金利が高い点が大きなメリットです。2022年12月22日時点では、各国の10年国債金利は、日本が0.17%であるのに対し、アメリカは3.69%、ニュージーランドは4.37%となっています。
わずかな金利水準の差が、受け取り時には大きな違いとなります。利率年0.5%、1%、3%の場合、それぞれ1万米ドルで10年間経過したケースを比較してみましょう。
購入や利払い、償還時の為替がすべて1米ドル100円の条件下では、源泉徴収後の金額は年率年0.5%では約104万円、年1%では約108万円、年3%となると約124万円となります。
ただし、一般的に金利の高い債券は信用リスクも高くなる傾向にあることを勘案して選ぶ必要があるでしょう。
2.円安時には為替差益を得られる
外貨建て債券を購入後、為替相場が円安となった場合、償還金や売却金額を受け取る際に為替差益を得られる可能性があります。
為替差益とは、為替レートの変動によって生じる利益のことです。一方で為替レートが円高に触れた場合には為替差損が生じることもあることに注意しましょう。
3.分散投資によりリスク分散ができる
外貨建て債券は、日本の債券や株式などと値動きが異なる傾向があるため、分散投資で運用リスクを低減できることもメリットの一つです。
また、各国の通貨は固有の動きをする傾向があり、米ドルをはじめユーロや豪ドルなどの複数の通貨の債券を保有することで、リスクを分散させることができます。
外貨建て債券の5つのリスク
外貨建て債券にはリスクもあります。ここでは、次の5つのリスクを解説していきましょう。
- 為替リスク
- カントリーリスク
- 価格変動リスク
- 信用リスク
- 流動性リスク
1.為替リスク
外貨建て債券には、為替リスクがあることに注意が必要です。外貨建て債券は、元本の払い込みや利払いが、外貨で行われることが特徴です。
そのため、途中で売却する際や利子の受け取り、満期償還時には為替レート変動の影響を受けます。円安になった場合は為替差益を得られますが、円高になると為替差損が生じる可能性があり、これを為替リスクといいます。
そもそも為替とは、現金の代わりに手形や小切手、証書などで決済を行う方法のことです。異国間で為替が行われる場合は、通貨の交換を伴うことから外国為替といいます。
外貨建て債券は為替の値動きによって資産価値が変動するため、購入時はもちろん購入後も、為替をまめにチェックする必要があるでしょう。
【為替リスクを減らす|「円高抵抗力」を確認しておく】
為替リスクを減らすためには、外貨MMFを活用するという方法があります。外貨建て債券の利子や償還金で、そのまま外貨MMFを買い付けることができます。
MMFとは、元本割れリスクの低い債券が組み込まれた、高い安全性と換金性を誇る公社債投資信託のことです。外貨建てのMMFである外貨MMFは、売買したいときに売買できる可能性が高く、対象通貨の短期金利に連動することが特徴です。
円高となってしまったときには、利子や償還金を外貨のまま保有し、為替レートを見ながら円安水準になるまで待つということもできますが、証券会社に預けたままですと利息等が付かない場合がありますので注意が必要です。
また、「円高抵抗力」を知っておくとよいでしょう。円高抵抗力は、収益がマイナスにならずにすむ為替の水準をあらわす指標です。外貨建て債券の利率は高いため、ある程度の円高抵抗力があります。
例えば下記の条件の債券では、1米ドル=91.28円までの円高までであれば、収益がマイナスにならずにすむとされます。
- 利率:4.00%
- 期間:3年
- 元本:10,000米ドル
- 購入時の為替レート:1米ドル=100円
- 円ベースの投資元本:1,000,000円
- 税引き後の3年間の受け取り利子:956.22ドル
- 税引き後の利子+償還金:10956.22米ドル
2.カントリーリスク
カントリーリスクにも注意しましょう。カントリーリスクとは、投資対象国や地域で、政治や経済の情勢変化が起きたり、新たな取引規制が作られたりするなどによって受けるリスクのことです。
発行通貨国の状況の変化によって、債券の売買が制限されるなど、損失を受ける可能性があります。
3.価格変動リスク
価格変動リスクも考慮する必要があるでしょう。満期前に換金する場合は、時価で売却することになるため、売却時の時価によっては購入価格を下回る可能性があります。
4.信用リスク
外貨建て債券に限らず、債券には信用リスクもあることを覚えておく必要があるでしょう。発行体の財務状況の悪化によって利子や満期日における償還金の支払いが遅れたり、支払われない可能性があったりすること、これを信用リスクといいます。
信用リスクを見極めるには、発行体の事業の内容や、財務状況をチェックする必要があります。格付機関が発表する「格付」も判断のために参考にするとよいでしょう。
5.流動性リスク
流動性リスクとは、債券を途中で売却する際に買い手がつかず売ることができなかったり、売却できても著しく不利な価格での売却となったりすることです。流動性リスクは、市況や金利水準の変動、発行体の信用力の変化などによって生じます。
外貨建て債券にかかる税金
平成28年1月以降、外貨建て債券の利子や譲渡益、償還差益にかかる税金は、上場株式と同じように申告分離課税の扱いになりました。
上場株式などの配当金や、譲渡損益との通算も可能になっています。また、利子や譲渡益、償還差益のいずれも20.315%の税金が課されることを覚えておきましょう。
為替差損益は、譲渡損益、償還差損益に含めて計算します。また外貨建て債券は、特定口座で管理することができます。
参照元:国税庁「個人の方が上場株式等を保有・譲渡した場合の平成28年1月からの金融・証券税制について」
外貨建て債券の特徴を理解して投資を始めよう
外貨建て債券は、外貨で払い込みや利払い、償還金の支払いが行われる債券のことです。外貨建て債券であれば、超低金利が続く日本では期待できない、海外の高い金利を享受できる可能性が高いといえます。また、為替差損益を期待できる点も魅力です。
ただし、為替リスクやカントリーリスクなど、リスクがあることも十分に理解した上で購入することが重要です。外貨建て債券の特徴をよく理解して、投資を始めることをおすすめします。
このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
株式会社Fan
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