外貨建て投資信託とは、外国の株や債券を投資対象とし、外貨で取引される投資信託です。購入方法は外貨で購入する場合と円で購入する場合の2パターンで、売買する際は外国証券取引口座の開設が必要です。今回は外貨建て投資信託の仕組みや代表的な種類、外貨で投資するメリットなどを説明します。
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外貨建て投資信託とは?
外貨建て投資信託とは、外国の株式や債券などに投資する投資信託です。証券会社などで外国証券取引口座を開設すると売買を始められます。
米ドルや豪ドルなどの外貨で取引され、基準価額や分配金が外貨で表示されるのが特徴です。代表的な種類には、外貨建てMMFや米ドル建て投資信託などがあります。
外貨建て投資信託は、国内投信と外国投信の2パターンに分類されます。外貨建て投資信託の仕組みや外国籍投資信託との違いを見ていきましょう。
国内投信と外国投信の2パターン
外貨建ての投資信託には、国内投資信託と外国投資信託の2つがあります。国内投資信託とは、日本国内で設定された海外の証券や外貨建ての投資信託を運用する仕組みです。
一方の外国投資信託は、外国で設定された投資信託に投資する方法です。つまり、日本国内の証券や円建ての投資信託を運用する場合でも、外国で設定されている場合は外国投資信託に含まれます。
日本と外国では運用規制が異なるため、日本では設定不可の種類の商品を設定することが可能です。特に、モーリシャスやルクセンブルクなどの投資に対する税金が低い国で組成・管理されるケースが多いです。
外国籍投資信託との違い
外国籍投資信託とは、外国の法律に基づいて設定された投資信託を指します。外国投資信託と同義であり、外国投資信託の別の言い方と理解しておきましょう。
外国籍投資信託が海外で組成・運用される投資信託を意味するのに対し、外貨建て投資信託は外貨建てで販売される投資信託を指す言葉です。字面が似ているため、意味を混同しないように注意しましょう。
代表的な種類(1)外貨建てMMF
外貨建て投資信託の代表的な種類として、外国投資信託の外貨建てMMFが挙げられます。ここでは、外貨建てMMFの仕組みを以下の項目に分けて解説します。運用を始める際の選択肢の一つとして、外貨建てMMFの基礎知識を理解しておきましょう。
- 外貨建てMMFの特徴
- 外貨建てMMFを運用するメリット
- 外貨建てMMFの収益分配金にかかる税金
- 外貨建てMMFの換金時にかかる税金
外貨建てMMFの特徴
外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)とは、格付の高い外貨建ての国債や短期商品などを投資対象とする投資信託です。外国投資信託の一種であり、米ドルなどの外貨で売買が行われます。
為替スプレッドは発生しますが、売買手数料はかかりません。安全性や信頼性の高い企業などに少額から投資できることや、元本割れのリスクが少ないことから、投資初心者向けの商品として知られています。
外貨建てMMFを運用するメリット
外貨建てMMFを運用するメリットは、好利回りが期待できることです。日本円に比べて金利が高い傾向にある外貨で運用するため、高い利回りが狙えるでしょう。運用で得た利益を再投資に回せば、利息を含めた金額に利息がつく複利効果にもつながります。
売買手数料がかからない点や、証券会社が倒産した際に資産が保全される点もメリットです。また、換金や売却、解約が簡単にできるのも魅力でしょう。投資手法によっては解約時に手数料がかかることがあるため、気軽に解約できるのは大きな利点です。
外貨建てMMFの収益分配金にかかる税金
外貨建てMMFの収益分配金には、税率20.315%の税金が課税されます。20.315%の内訳は、所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%です。
源泉徴収によって課税関係が終了するため、確定申告は必要ありません。ただし、任意で確定申告することは可能です。他の投資信託で出た譲渡損失と損益通算したい場合は確定申告を行いましょう。
参照元:ソニー銀行「投資信託と外国為替証拠金取引(FX)にかかる税金の基本」
外貨建てMMFの換金時にかかる税金
外貨建てMMFの換金によって利益が出た場合は、収益分配金と同様に税率20.315%の税金がかかります。原則として源泉徴収されないため、自ら確定申告をして納税する必要があります。ただし、源泉徴収ありの特定口座を利用する場合は確定申告をしなくても構いません。
なお、外貨建てMMFの取引のために外貨預金を行い、預け入れと解約によって為替差益が発生した場合は、雑所得として総合課税の対象となります。
参照元:ソニー銀行「投資信託と外国為替証拠金取引(FX)にかかる税金の基本」
代表的な種類(2)米ドル建て投資信託
外貨建て投資信託の代表的な種類として、米ドル建て投資信託もその一つです。米ドル建て投資信託とは、商品の購入や損益・分配金などの表示が米ドルで行われる投資信託を指します。
米ドル建て投資信託を運用する際は、政治の変化によるリスクに注意が必要です。米国は世界経済の中心的存在を担う国のため、内政・外政の変化によって市場が大きく変動するリスクがあります。
経済成長の面では将来性がありますが、政情変動によって損失を被る可能性がある点は理解しておきましょう。
米ドル建て投資信託の主な種類
米ドル建て投資信託には以下のような種類があります。
- 債券ファンド
- 株式ファンド
- バランスファンド
- REIT
バランスファンドとは、株式や債券など複数の投資対象に分散投資するファンドです。1つのファンドで投資対象や投資地域を分散させることで、大きく値下がりするリスクが軽減されます。
REITとは、不動産投資による賃料収入を投資家に配当する仕組みです。不動産の損壊による価格や分配金の低下など、REITならではのリスクがいくつかあります。
それぞれリスクの大きさが異なるため、投資の目的やリスク許容度を整理したうえで商品を選びましょう。例えば、バランスよく投資したい場合は、株式ファンドと債券ファンドを組み合わせて運用するのも選択肢の一つです。
外貨建てで投資するメリット&注意点
外貨建てで行う投資手法には、メリットと注意点の両方が存在します。外貨建て投資信託の基本的な仕組みや代表的な種類を理解したら、「そもそも外貨建ての投資にはどのようなメリットがあるのか」「注意すべきデメリットは何か」なども知っておきましょう。
ここでは、外貨建てで投資するメリットと注意点をそれぞれ解説します。
外貨建てで投資するメリット2つ
外貨建てで投資するメリットは、高い金利水準で投資できる可能性があることです。超低金利時代が続く日本に比べて、海外の金利は高い傾向があります。高金利の外貨で投資を行えば、利息による収入が大きくなるでしょう。
なお、外貨投資の魅力は金利の有利さだけではありません。ここでは、外貨建てで投資する2つのメリットを解説します。
- 円安時に為替差益を得られる
- リスクを分散して投資できる
①円安時に為替差益を得られる
外貨投資のメリットは、円安時に為替差益を得られることです。為替差益とは、日本円を外貨に両替した際の金額と、外貨を日本円に戻した際の金額の差によって生じる利益です。
例えば、1ドル100円の場合に100万円を両替すると、1万ドル分の米ドルに換えられます。その後、円安が進んで1ドル120円になった際に両替すれば、120万円が手元に残り、20万円分の利益を得られます。
投資信託の運用益に加えて為替差益が生じた場合は、さらに大きな利益が見込まれるでしょう。
②リスクを分散して投資できる
投資におけるリスクを分散できることも、外貨投資を行うメリットの一つです。円建てで資産を保有している場合、円安時には資産価値が相対的に目減りします。資産の一部を外貨建てで保有すれば、円安が進んだ場合でも資産が目減りするリスクを抑えられるでしょう。
このように、投資対象を外国の株式や債券などに広げる考え方を国際分散投資といいます。外貨建て投資信託は専門家が投資する商品を選んで運用するため、外貨投資の中でも比較的簡単に国際分散投資ができます。
外貨建てで投資する際の注意点
外貨建てで投資する際は、為替変動リスクやカントリーリスクなどに注意が必要です。為替変動リスクとは、為替相場の動きによって外貨建て資産の価値が変動する可能性のことです。
為替変動によって円安になれば為替差益を得られますが、円高になった場合は為替差損が生じ、元本割れのリスクが高まります。為替相場は日々変動するため、売却のタイミングをよく考えなければいけません。
カントリーリスクとは、投資対象の国や地域の政治・経済が変化した際に、証券市場や為替市場の混乱によって資産価値が変動する可能性のことです。例えば、国債を発行する国の経済状態が悪化すると、国債がデフォルトする恐れがあります。
為替変動リスクやカントリーリスク以外では、為替手数料にも注意が必要です。高金利で運用していても、売買の頻度が高くなれば為替手数料がかさんでしまう可能性があります。
リスク回避が期待できる為替ヘッジとは?
外貨建て投資信託を運用する際は、為替変動リスクがつきまといます。リスクを抑えて投資するなら、為替ヘッジを実践するのがおすすめです。
外貨建て投資信託の中には為替ヘッジを選択できるタイプがあり、為替ヘッジをすると為替変動リスクの回避が期待できます。ここでは、為替ヘッジの仕組みやメリット・デメリットを解説します。
為替ヘッジの仕組み
為替ヘッジとは、通貨を交換する際の為替レートをあらかじめ約束しておき、為替変動リスクを抑える仕組みです。例えば、米ドル建て投資信託を1ドル110円で購入し、「1年後に1ドル110円で交換する」と契約する形です。
為替ヘッジを選択すると為替相場に影響されなくなるため、為替差損の発生によって資産が目減りすることを予防できます。
為替ヘッジのメリット&デメリット
為替ヘッジのメリットは、為替変動リスクを気にせずに外貨建ての投資信託を運用できることです。ただし、為替差損が生じない代わりに、為替差益を得ることもできません。
また、為替ヘッジを選択するためにはヘッジコストがかかります。為替ヘッジは為替変動リスクの軽減に有効ですが、為替差益による運用益アップが見込めない点や、コストがかかる点には注意が必要でしょう。
投資するなら外貨建て投資信託を検討しよう
外貨建て投資信託は外国の株式や債券などを投資対象とする仕組みで、国内投信と外国投信に大きく分かれます。外貨建てMMFや米ドル建て投資信託などの種類があり、主なメリットは「為替差益を得られること」「分散投資ができること」です。
一方で、為替変動リスクやカントリーリスク、為替手数料などには注意が必要です。リスク軽減に有効な為替ヘッジの仕組みも理解したうえで、外貨建て投資信託の運用を検討してみてください。
このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
株式会社Fan
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