株を長期保有すれば大きな利益を狙える可能性がある一方で、特定の銘柄に資金が拘束されて他銘柄に投資できなくなります。
株で利益を出すためには、自分が選ぶ投資スタイルの特徴を理解しておくことが大切です。
こちらの記事では、株を長期保有するメリットとデメリット、実際に株の売買をする際の注意点を解説します。
株の長期保有の定義とその他の投資スタイルを解説
株式投資の投資法のひとつである長期保有は、文字通り、株を長期間にわたり保有して利益を狙う手法です。
投資法の分類の仕方にはいくつかの方法があり、株を保有する期間の長さを基準に分類した場合の投資法のひとつに長期保有があります。
長期保有も含めたいくつかの投資法の特徴や違いをチェックして、自分にあった投資法がないか確認してみましょう。
長期保有について
株を買った後に長期間にわたって保有し続けて利益を狙う投資法が長期保有です。
「長期」に絶対的な基準や定義はありませんが、1年以上の期間を指す場合が多く、数ヶ月間の株式保有であっても長期保有と考える人もいます。
人によっては、1年以上の保有を長期、数ヶ月の保有を中長期と分けて考える人もいますが、数日や数週間程度にわたり株を保有するスイングトレードよりは、少なくとも長い期間にわたり株を保有する投資法が長期保有です。スイングトレードについては後述します。
長期保有では、短期的な値動きで利益を狙うのではなく、長期的な値上がりを期待して株を購入します。このあとに紹介するデイトレードのように、頻繁に銘柄を入れ替えて取引手数料が何度もかかるわけではありません。そのため他の投資法に比べると、長期保有では取引コストを低く抑えられます。
また長期保有はじっくりと腰を据えて待つ投資スタイルであり、短期的な値動きに一喜一憂する必要がありません。平日の日中に常に株価を監視し続ける必要はなく、平日は仕事で忙しくて株価をリアルタイムでは見れない会社員でも実践しやすい投資スタイルです。
デイトレードについて
デイトレードとはデイ(day)、つまり1日で取引を終えるトレード手法のことで、その日に買った株は当日中に売却して損益を確定させる仕組みです。
短期間に売買するため1回あたりの利益は大きくなりませんが、何度も売り買いを繰り返すことで利益を積み上げる方法です。
デイトレードでは日をまたいで持ち越さないため、市場が閉じている平日夜間や週末に株価下落要因になる出来事が発生した場合でも、株価の急落に巻き込まれることはありません。
取引回数が多いため取引手数料はかさみますが、長期保有のように特定の銘柄に資金が拘束されることはなく、利益を狙えそうな銘柄があれば次から次に銘柄を切り替えて投資を行います。数多くの銘柄に投資できる点で資金の回転効率が良い投資法です。
ただし、1日の中である程度の値動きがあり利益を狙える銘柄を扱うため、瞬間的な値動きに対応して利益を出せるだけの瞬発力や経験が求められます。基本的に日中に株価をリアルタイムで監視して売買するため、平日の日中に仕事がある会社員などには難しく、投資を専業にしている個人投資家などが主に行う方法です。
また短期間に売買を繰り返すため、損失を出すトレードが何度も続くと損失が一気に積み上がるリスクがあります。
スイングトレードについて
スイングトレードでは購入した株を数日から数週間ほど保有して売却します。株を保有する期間がデイトレードより長く、長期保有より短いのがスイングトレードです。
たとえば月曜日に株を購入して金曜日までに売却し、その1週間の中で取引を完結させて週末は持ち越さないルールで取引するような場合がスイングトレードにあたります。スイングトレードはデイトレードと長期保有の間に位置する投資法です。
デイトレードよりも保有期間が長いため1回のトレードで大きな利益を狙える可能性があり、長期保有よりも保有期間が短いため多くの銘柄に投資できて資金の回転効率が良くなります。長期保有のように、特定銘柄に長期間に渡って資金が拘束されることはありません。
ただしデイトレードと違って日をまたいで株を保有するため、株式市場が閉じている間に予期せぬ出来事が起きてしまい、翌取引日の株価急落に巻き込まれるリスクがあります。
デイトレードと長期保有それぞれのメリットを併せ持つのがスイングトレードの良さですが、同時にデメリットも併せ持つ点には注意が必要です。
株を長期保有する3つのメリット
株を長期保有することの主なメリットは「大きな利益を得られる可能性がある」「短期的な値動きに一喜一憂せずに済む」「配当金や株主優待をもらえる」の3つです。
これらの点をメリットと感じる場合には、数ある投資法の中でも長期保有を選択して株式投資を行うと良いでしょう。ここでは3つのメリットについてそれぞれ解説していきます。
1.大きな利益を得られる可能性がある
1日や1週間など短期間ではあまり値動きがない銘柄でも、1年など長い期間が経てば株価が大きく上昇する場合があります。
株価上昇の大きな波をうまく捉えられたときに、利益もその分だけ大きくなる点が長期保有のメリットです。
デイトレードやスイングトレードの場合は、短期的な小さな株価上昇の波を狙って取引することが多く、1回あたりの利益は基本的にそれほど大きくなりません。
取引回数を増やすことで利益を積み上げられますが、取引の回数が増えればその度に銘柄選びのための企業分析などが必要になり、手間と労力がどうしてもかかります。
もちろん、1年先や数年先に成長して株価が上昇する企業を予測するのは簡単ではありませんが、短期的な視点に立つトレード手法では得られないような大きな利益を手にできる可能性がある点は、長期保有の魅力のひとつです。
2.短期的な値動きに一喜一憂せずに済む
長期保有では長期的な視点に立って投資するため、短期的な値動きに一喜一憂する必要がありません。
デイトレードやスイングトレードの場合は、短期的な値動きが気になって落ち着かない人や冷静に取引できない人がいますが、長期保有であれば短期の値動きを気にせず冷静さを保ちやすい点がメリットです。
たとえば株を数日保有して売却する前提で会社員がスイングトレードを行う場合、株価が気になってしまい、普段の仕事が手に付かないケースがあります。株価が気になって不安になるようでは精神的に良くありませんし、仕事や普段の生活など株式投資以外のことに悪影響が出ては問題です。
その点、長期保有の場合は最初から長期的な視点でチャートを見るものと割り切れるため、短期的な株価の上げ下げを気にすることはありません。
あくまでその人の考え方や性格などによって変わる部分ではあるため、人によっては長期投資でも不安になる場合はありますが、デイトレードなどに比べれば精神的に余裕をもって相場に臨みやすくなります。
3.配当金や株主優待をもらえる
長期保有では配当金や株主優待をもらえる点もメリットのひとつです。
配当金や株主優待をもらうには権利確定日に株を保有している必要があり、1年以上株を持ち続けることも多い長期保有であれば、権利確定日をまたいで株を持つことで配当金や株主優待がもらえます。
一方でスイングトレードの場合は保有期間が短いため権利確定日をまたがないことが少なくなく、デイトレードの場合はそもそも日をまたいで株を保有することがないため、権利確定日に株を保有するということ自体がなく、配当金や株主優待は受け取れません。
配当金を狙って銘柄を選び長期保有をした場合、仮にその企業の業績が好調で株価が上がれば含み益が生じ、好調な業績をうけて配当金が増額されるようなことがあれば、配当金収入も増えることになります。
株を長期保有する3つのデメリット
株の長期保有にはメリットがある反面、残念ながらデメリットもあり、特に「利益が出るまでに時間がかかる」「資金が拘束されて他の銘柄に投資できない」「予期せぬ出来事に巻き込まれる確率が上がる」の3つがデメリットです。
長期保有によって株式投資を行う場合には、メリットだけでなくデメリットも理解した上で株の売買を行うようにしてください。
1.利益が出るまでに時間がかかる
株を長期間保有して利益を狙う以上、結果が出るまでに時間がかかる点が長期保有のデメリットです。
結果がその日のうちに決まるデイトレードや、数日や数週間で結果がわかるスイングトレードと違い、長期保有で結果が出るのは1年先や数年先になる場合があります。
短期的な値動きに一喜一憂する必要がない点はメリットですが、逆に長期保有の場合は長期間に渡って忍耐強く待たなければいけません。
数年先のことを予測するのは簡単ではなく、本当に利益を出せるのかどうか途中で不安になる人もいます。
そのため長期保有は忍耐力がない人にはあまり適さない投資法です。株を長期保有しても利益が出ずに終わる可能性があり、その場合には株を保有していた時間が無駄になります。
2.資金が拘束されて他の銘柄に投資できない
長期間にわたって特定の銘柄を保有し続けるため、資金がその銘柄に拘束されて他の銘柄に投資できない点も長期保有のデメリットです。
ある銘柄を保有しているときに他に買いたい銘柄が出た場合でも、資金不足で購入できず投資機会を逃す可能性があります。
そもそも長期保有は株価の長期的な上昇を狙う投資法であり、デイトレードのように投資銘柄を頻繁に変えて有望な銘柄に次から次に投資するわけではありません。
資金の回転効率がどうしても悪くなるため、少しでも多くの銘柄を取引したい人は、取引頻度が高い他の投資法を選ぶ必要があります。
3.予期せぬ出来事に巻き込まれる確率が上がる
他の投資法に比べて株を保有している期間が長いため、予期せぬ出来事に巻き込まれる確率が上がる点が長期保有のデメリットのひとつです。
株価急落の要因となる何らかの出来事が生じた場合に損失を被る可能性があります。
たとえばデイトレードの場合は日をまたいで株を持ち越さないため、株式市場が閉じている平日の夜間や週末に何らかの出来事が起きて世界の株式市場に影響が出た場合でも、そもそも株を保有していないため株価の下落に巻き込まれることはありません。
しかし長期保有の場合は、万が一世界同時株安が発生したり個別銘柄まで影響を受けて株価が下がったりすれば、その銘柄を長期保有している投資家にも当然影響が出てしまいます。
リーマンショックのような株価の急落が発生して巻き込まれる可能性もゼロではなく、予期せぬ出来事によって含み益がすべて消えるリスクや、大きな含み損を抱えてしまうリスクがある点には注意が必要です。
長期保有で利益を狙うための3つのポイント
長期保有をする際にポイントになるのが「ファンダメンタルのチェック」「忍耐力」「柔軟な対応」の3点です。
どのような投資法で株式投資をする場合でも、その投資法の特徴を踏まえて株を売買する必要があります。長期保有で利益を狙うためのポイントを押さえた上で実際の取引を行うようにしましょう。
1.ファンダメンタルをチェックする
長期的に見て業績が良くなり株価が上昇する可能性があるのか、配当金は今後も継続されそうか、この点を予測するためにはファンダメンタルをチェックする必要があります。
経済全体の状況や企業の業績を分析するファンダメンタルズ分析は、株の長期保有で利益を狙う際に欠かせない要素のひとつです。
そのため株の長期保有を行う場合には、日頃から経済ニュースや企業が発表するニュースリリース等を確認するようにし、業界全体や企業の動向をチェックするようにしましょう。
どのような出来事が起きると株価にどう影響するのか、PER(株価収益率)やROE(株主資本利益率)、配当利回りなどの指標は一体どのように使えば良いのか、最初はわからないことが多くて戸惑うこともあるかもしれませんが、ひとつずつ経験を積んでいき、株式投資の世界で必要になる知識や考え方を身に付けていくことが大切です。
2.日々の値動きに一喜一憂せず忍耐強く待つ
長期保有では日々の値動きに一喜一憂せずに忍耐強く待つことが求められます。
長い期間にわたって株を保有することで大きな利益を出せるのが長期保有のメリットであり、短期的な値動きを見てすぐに損切りや利確をしては、そのメリットが十分に活かせません。
人によっては、少し株価が上がっただけで利確をしたくなる場合や、僅かに株価が下がっただけで含み損が気になり損切りをしたくなる場合がありますが、長期保有で大事なのは短期的・瞬間的な値動きよりも寧ろ長期的な視点です。
その銘柄を購入した際、長期的な視点に立って株価が上がると判断した根拠があるはずで、その根拠が崩れていなければ、長期的には株価が上がる可能性があることになります。
短期的な値動きだけを見て利確や損切りをすると、長期的な株価上昇の可能性を見ないことになり結果的に大きな利益を取り逃がすこともあるため、長期的な視点に立つことが長期保有の前提である点を忘れないようにしましょう。
3.ファンダメンタルが変わった場合に柔軟に対応して損切りする
株の長期保有では、短期的な値動きに一喜一憂せず安易に利確や損切りをしないことが求められますが、その一方で状況が変わった場合には柔軟に対応することが大切です。
たとえばファンダメンタルが変わって株価が下落したり上昇の可能性が低くなったりした場合には、状況を的確に見極めて必要であれば損切りをして株を手放しましょう。
それまで長期間にわたって保有していた株を手放す際、人によっては「今更損切りをするのも……」と躊躇する場合がありますが、企業分析等を行った結果として保有すべき銘柄でなくなったのであれば、損失の拡大を防ぐために売却するのが正解ということになります。
配当目的や株主優待目的で保有している銘柄の場合は、配当等を受け取れるように保有し続けること自体に意味があるため、多少の状況の変化では損切りしないという選択肢も考えられますが、長期保有では状況の変化に柔軟に対応できるようにしておく必要があるため、経済ニュースや企業業績のチェックは欠かさずに行いましょう。
自分にあった投資手法を見つけることが大切
株式投資を長期保有で行う場合でもその他の投資スタイルを選ぶ場合でも、それぞれの投資法にはメリットとデメリットの両方があります。
どのような投資法が適しているかは人によって異なるため、まずは自分にあった投資法を探すことが大切です。
今回紹介した長期保有も含めて、株式投資のさまざまな投資法について理解を深め、自分が最もやりやすいと感じる投資法、安定して利益を出せる投資法を見つけましょう。
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このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
株式会社Fan
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