出産費用はいくらかかる?自己負担を減らす節約方法も併せて解説

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出産費用は健康保険の適用外で、少額ではないため事前の準備が必要です。出産の仕方やタイミングによって金額は変わります。各種の補助金制度があるので、上手に活用するといいでしょう。本記事では出産費用の金額や内訳、節約方法を解説します。

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出産費用は平均約52万円

出産費用

厚生労働省保険局が集計した令和元年度の速報値によると、出産費用(室料差額や産科医療補償制度掛金、その他の費目を含んだ金額)の平均値は約52万円です。国公立病院、国公立大学病院などの公的病院のほうが費用は安く、約51万円で、私的病院は約55万円となっています。

【令和元年度(速報値)】

 平均値中央値
全体524,182円509,910円
公的病院511,444円501,280円
私的病院550,993円526,336円
診療所(助産所を含む)517,371円506,900円

公的な制度を活用することによって出費は抑えられますが、健康保険の適用外ということもあり、まとまった金額が必要になるので、事前に準備しておくことが必要です。出産費用について、さらに詳しく解説しましょう。

出産費用は健康保険が適用されない

出産費用は健康保険が適用されません。健康保険は病気やケガに対して適用されるものであり、妊娠と出産は病気ではないからです。基本的には出産費用は全額自己負担となります。

ただし公的な支援制度が用意されているので、保健所で母子手帳の申請をする時に、確認するといいでしょう。出産育児一時金、出産手当金などの主な公的制度については後述します。

また、帝王切開による分娩など、正常分娩にあたらない場合には「分娩介助」が行われたことになるため、医療保険が適用されます。

出産費用の内訳

出産費用の内訳は以下の8つに分類されます。厚生労働省保険局が集計した公的病院における出産費用の内訳とその概要と平均の金額(令和元年度の速報値)を示した表は以下のとおりです。

入院料妊婦の室料と食事料180,452円
分娩料分娩時の医師と助産師の技術料と介護・介助料201,458円
新生児管理保育料新生児の管理・保育に要した費用37,480円
検査・薬剤料妊婦の検査料と薬剤料14,439円
処置・手当料妊婦に対する医学的処置や乳房ケアなどの費用9,947円
室料差額妊婦の選定によって、差額が出た場合の費用19,688円
産科医療補償制度産科医療補償制度の掛金に相当する費用15,778円
その他文書費、材料費など医療外の費用32,202円
合計 511,44円

入院料が約18万円、分娩料が約20万円となっており、この2つの割合が高いことが、この表からわかります。出産費用は病院によっても異なるため、あくまでも目安として参考にしてください。

出産費用は環境や出産の仕方で異なる

新生児

上の表で出産費用の公的病院における平均値を示しましたが、出産費用は出産する環境や出産の仕方などによって異なります。妊婦本人の希望で選択できるものと、住んでいる場所によって決まるものがあります。主な要素は以下の3つです。

  • 施設の種類や入院日数によって異なる
  • 分娩方法によって異なる
  • 都道府県によって異なる

それぞれ詳しく解説しましょう。

施設の種類や入院日数によって異なる

出産できる施設は公的病院と私的病院と診療所に分けられます。公的病院は国公立病院、国公立大学病院、国立病院機構です。私的病院は私立大学病院、医療法人病院、個人病院など、診療所は官公立診療所、医療法人診療所、個人診療所、助産所などがあります。この分類では平均費用が安い順に、公的病院、診療所、私的病院となっています。

出産できる施設は産婦人科のある総合病院、産科・婦人科専門の診療所、助産所という3種類に分けることもできます。この分け方の場合は一般的には助産所の費用がいちばん低く、診療所、病院という順番で高くなります。

常駐している医師やスタッフの人数、設備の違いが料金に反映しているということでしょう。検診は職場の近くの施設で受けて、出産は家の近くの施設にするなど、使い分けることもできます。

施設の設備・医師・スタッフ・環境・料金など、さまざまな要素を考慮したうえで、どこで出産するかを検討するのが良いでしょう。

分娩方法によって異なる

分娩方法によって出産費用は異なります。分娩方法は大きく分けると、「自然分娩」「和痛分娩」(「無痛分娩」と呼ぶ場合もある)「帝王切開」の3つの方法があります。

自然分娩は医学的な処置を施すことなく自然に出産する分娩方法です。保険が適用されないため、全額自己負担となります。

和痛分娩もしくは無痛分娩は妊婦の希望によって、麻酔をして痛みを抑えて行う分娩方法です。自然分娩と同様に、保険は適用されません。麻酔や陣痛促進剤の料金が加わるために、自然分娩よりも料金が高くなるのが一般的です。

帝王切開は逆子などによって自然に分娩することが難しいと医師によって判断された場合に、手術によって分娩する方法です。手術を行うので、医療の範囲となるため、健康保険が適用されます。手術と入院の費用の自己負担は3割となり、高額療養費制度の利用でさらに自己負担の金額を抑えられます。

都道府県によって異なる

出産費用は都道府県によって異なります。公益社団法人国民健康保険中央会による平成28年度の出産費用の平均金額は東京都がもっとも高く、621,814円となっています。2位は神奈川県の564,174円、3位は栃木県の543,457円です。

一方、出産費用の平均金額がもっとも安いのは鳥取県の396,331円、2位が熊本県の415,923円、3位が沖縄県の418,164円となっています。

地域によってかなり差があることがわかるでしょう。現在住んでいる場所の近くで出産するのか、実家の近くで出産するのかを考える際、地域による価格差も考慮すると良いでしょう。

出産前後の費用

妊婦検診

出産にかかる費用は入院時のものだけではありません。出産の前後にも費用がかかります。出産したかどうかを確認する時点から費用が生じ、出産が判明したのちは、出産前の準備と出産後の準備にも費用がかかることを想定しておく必要があるでしょう。

出産の前後にかかる費用の主なものは妊娠中の健診料とマタニティとベビー用品の購入代金です。それぞれ詳しく解説します。

妊娠中の健診料

妊娠中の健診にかかる費用は妊娠の週数によって変わります。また妊娠のどの時期にあたるかによっても、金額が異なるので注意が必要です。

妊娠健診で自己負担する金額はおおよそ2万5,000円から7万円の間で、地域や病院によっても異なります。妊娠健診は保険の適用外ですが、赤ちゃんの心拍が確認されると、母子手帳が交付されて、自治体から健診費用の一部を補助する補助券も交付されます。

妊娠健診の1回あたりの料金は妊娠初期(4週)から妊娠後期(35週)までは1,000円から3,000円、後期以降出産までは3,000円です。健診は1ヵ月に1回のペースが一般的です。

マタニティとベビー用品の費用

マタニティとベビー用品の費用も必要になります。マタニティは妊婦が利用する服や下着などです。妊娠すると体形が変わるため、おなかの大きさに合わせて、衣類を購入する必要があります。妊婦帯、マタニティパジャマなども必要です。

出産する前にベビー用品をある程度揃えておく必要もあります。おむつ、哺乳瓶と消毒セット、抱っこひも、ベッドやふとんなどの寝具、衣類、チャイルドシートなど、品目は多岐にわたっており、かなり費用がかかることを想定しなければなりません。

出産で活用したい公的制度

医療費控除

出産費用にかかる金額は決して少ないものではありません。しかし、公的制度を活用することによって、自己負担額を抑えることができます。なお支給を受けるためには書類の提出が必要となり、さらに通常は支給を受ける条件が設定されているので、確認することが必要です。

主な公的制度は以下の4つです。

  • 出産育児一時金
  • 出産手当金
  • 高額療養費制度
  • 医療費控除

それぞれ詳しく解説しましょう。

出産育児一時金

出産育児一時金とは、赤ちゃんを出産すると、ひとりあたり42万円の一時金が助成される制度です。双子、三つ子など、複数の赤ちゃんを出産した場合には、人数分の出産一時金をもらうことができます。

出産一時金は本来は出産後にもらうものですが、出産費用が高額になることから、健康保険が病院に直接支払う、直接支払制度や受取代理制度ができました。出産費用から42万円が差し引かれる仕組みです。余剰分がある場合には還付されます。

産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合は出産育児一時金は40万4,000円となります。

出産手当金

妊婦が会社に勤めている場合には、出産手当金を受け取ることができます。産休の期間中で、出産日の42日前から出産の翌日以後の56日の範囲で、会社の給与の支払いを受けることができる仕組みです。

つまり98日分の出産手当が支給されます。出産手当の1日あたりの金額は12ヵ月の給料を基準にした日給の2/3の金額と定められています。つまり日給が1万5,000円ならば、1日あたり1万円が出産手当となり、1万円×98日間で98万円です。

健康保険から出産手当金として一括で支払われます。産休に入る前に会社で申請書を受け取って、産休後に提出すると、1~2ヵ月後に支払われます。なお、個人事業主、自営業、フリーランスなどは対象外です。パートやアルバイトは会社の健康保険に入っている場合は対象となります。

高額療養費制度

ひと月の医療費が自己負担限度額を超えた場合には、高額療養費制度で超過分の金額が支払われます。自己負担限度の金額は年齢や所得などの条件によって異なります。69歳以下で年収が約370万円から約770万円までの場合の自己負担上限額は8万7,430円です。

高額療養費が支給されるのは申請後となります。ただし、事前に限度額適用認定証を交付してもらった場合は、認定証を病院で提示することで、支払いは自己負担限度額までとなります。帝王切開の予定があるなど、事前に高額になるとわかっている場合は、申請しておくと良いでしょう。

医療費控除

1年間の医療費が10万円を超えた場合には、確定申告をすることで、医療費控除の制度よりお金が戻ってきます。医療費控除の対象となるのは健診費、分娩費、通院の治療費、赤ちゃんの入院費、病院への交通費などです。

ただし、病院への交通費でも公共交通機関を利用した場合には、控除対象となりますが、車で通院した場合のガソリン代は控除にならないなど、細かな決まりがあるので、確認しておくといいでしょう。

医療費控除は世帯で合算することができるため、夫や子供の医療費を合計して10万円を超えた場合には、控除の対象となります。ただし、出産育児一時金や民間医療保険の保険金は除外されるので、注意が必要です。

出産費用がたりない場合の対処方法

母子手帳

出産一時金や出産手当などを活用しても出産費用がたりない場合には、自己負担となる費用の一部を助成する制度や貸付制度を利用する方法があります。自治体独自の制度を設けている場合もあるので、住んでいる地区の情報を収集するといいでしょう。

ここでは出産費貸付制度と入院助産制度の利用の仕方について、詳しく解説します。

出産費貸付制度を利用する

出産一時金を支給されるまでのお金が足りないという場合には、出産費貸付制度を利用する方法もあります。出産費貸付制度とは出産育児一時金を受け取るまでの期間、出産費用を無利子で貸し付ける制度です。

貸付に際しては、出産予定日まで1ヵ月以内、もしくは妊娠4ヵ月以上で、医療機関などに一時支払いをする必要があるという条件があります。貸付金額は1万円単位となっており、限度額は出産育児一時金で支給される金額の8割相当です。

ただしあくまでも貸付制度なので、出産一時金が支給される際に、その一時金が充てられて、残った金額は指定した金融機関に振り込まれます。

入院助産制度を利用する

入院助産制度は経済的な理由によって、病院や助産所に入院することができない妊婦が利用できる制度です。出産前に申請することによって、指定の助産施設を利用することができます。

入院助産制度が適用される条件は生活保護受給世帯で住民税非課税世帯であること、出産時の該当年度の特別区民税もしくは市町村民税の所得割の額が1万9,000円以下の世帯です。申請は福祉事務所もしくは区や市役所の窓口となります。

どうしても出産費用が足りない場合には、親兄弟や親戚からの援助も検討するといいでしょう。

出産後の費用も考慮して資産計画を立てよう

出産後の費用も考慮して資産計画を立てよう

出産費用は保険の適用外ということもあり、平均額は約52万円とかなり高額です。公的施設と私的施設のどちらを利用するかによっても、また、出産の仕方や都道府県によってもかかる費用が変わるので、注意してください。

出産には出産育児一時金や出産手当金などの制度があるので、活用することで、出産費用を抑えることができます。しかし出産準備や出産後にもかなりの費用がかかることが見込まれるので、計画的に準備することをおすすめします。

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このコラムの執筆者

MONEY HUB PLUS 編集部

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