50代からでも資産運用を始めるのは遅くはありません。この記事では、どのような方法で始めることができるのか、具体的に紹介します。また、資産運用に必要な知識の身につけ方や、投資初心者におすすめのサービスについてもみていきましょう。
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そろそろ老後が気になる50代!みんなの資産状況は?
50代はまだまだ元気で若いものの、遠くない将来に老後の生活も見える年代です。周囲を見渡すと早期退職をする人がいたり、老後の備えについての話題が出たりと、何かと老後を身近に感じることが多いでしょう。
老後について考えるとき、将来の入院費用や年金などお金のことが気になる方が多い傾向があります。50代の平均資産状況を知ることで、ご自身の備えが十分なのか、いくらくらい貯めればよいのかを把握しましょう。
【2人以上世帯】平均金融資産額は1,684万円
金融中央広報委員会の調査によれば、世帯主が50代の2人以上世帯の平均金融資産額は1,684万円でした。このうち預貯金として保有しているのは633万円で、平均して1,000万円以上は預貯金以外として保有していることが分かります。
預貯金以外の資産でもっとも多いのは生命保険の350万円でした。株式の189万円、個人年金保険の146万円、投資信託の113万円と続きます。
■4世帯に1世帯は株式投資を実施
金融資産ごとにどの程度の世帯が保有しているのかみていきましょう。もっとも多いのは預貯金で、世帯主が50代の2人以上世帯の95.9%が何かしらの預貯金を保有しています。
その次に多いのは積立型の保険商品で、生命保険や損害保険の形で契約をしているようです。積立型保険商品を保有している世帯は58.9%でした。
続いて多いのは、個人年金保険の37.5%です。約3世帯に1世帯は公的年金だけでなく私的年金に加入していることがわかります。その次に多いのは株式で25.7%でした。このことから約4世帯に1世帯は株式を保有していることがうかがえます。非上場企業の株式を保有している可能性もありますが、上場株式を保有して株式投資を実施している可能性もあるでしょう。
【単身世帯】平均金融資産額は924万円
単身世帯についても見ていきましょう。金融中央広報委員会の調査によれば、世帯主が50代の単身世帯の平均金融資産額は924万円でした。このうち預貯金は322万円で、2人以上世帯と同じく、金融資産の半分以上を預貯金以外で保有していることがわかります。
預貯金以外でもっとも多い金融資産は株式の259万円、次いで投資信託の104万円でした。2人以上世帯とは異なり、万が一のときに同居している家族にお金を遺す必要性が少ないため、保険商品で多額の資産を保有している人は少ないようです。
金融資産ごとの保有率を見ると、もっとも多いのは預貯金で93.4%でした。個人年金保険の25.3%、保険商品の25.1%、株式の22.5%が続きます。このことから保険商品に加入している人は4人に1人はいるものの、2人以上世帯と比べると金額が少ないことがうかがえるでしょう。
参考:金融中央広報委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)|家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和2年)
50代が資産運用を始めるのに適している2つの理由
50代になるとある程度のまとまった資産を持っている人が多いということが分かりました。しかし、金融資産ごとの保有率を見ると、ほとんどの人が預貯金だけで保有しており、積極的に資産運用をしている人は多くないようです。
実際、50代は資産運用を始めるのに適したタイミングといえます。主な理由として2つあげられるでしょう。
- 老後が身近になり将来のプランを立てやすいから
- 教育費などの負担が減るから
詳しく解説します。
1.老後が身近になり将来のプランを立てやすいから
老後資金をいつかは用意したいと思っても、いくら用意すればよいのか、どのような方法で用意するのがよいのか、具体的に計画が立てにくいかもしれません。また、自分自身が老後に何を求めているのか、どのように過ごすのかについても、想像が難しいこともあるでしょう。
しかし50代にとっては、老後はそこまで遠い未来ではありません。老後をいつからと考えるかは人によっても異なりますが、退職したときから老後が始まるとすればあと10年ほど、公的年金の受給開始を老後の始まりとしても10数年で訪れます。
日本年金機構のねんきんネットやねんきん定期便には将来受け取れる年金額が記載されていますが、50代になれば、20代や30代のときと比べて、実際に受け取れる金額に近い額がわかるでしょう。
また老後をどう過ごしたいかというプランも、30代や40代の頃と比べるとより具体的に計画を立てられるようになるのではないでしょうか。年に2回は海外旅行に行きたい、月に1度は国内の山に登りたい、俳句のサークル活動を楽しみたいなど、老後の生活が具体的になってきます。
老後が見えてくる50代になったら、老後のプランを練り、どの程度のお金が必要なのか計算してみましょう。
2.教育費などの負担が減るから
30代や40代の中には将来の年金受取額が不安で、「早く老後に備えたい」と考える人もいるでしょう。とはいえ、住宅ローンの返済や子どもの教育費、定期的な車の買い替えなど、何かと出費が多く、老後の資金まで手が回らないのが現実です。
しかし、50代になると、住宅ローンを完済する人や子どもが社会人になる人も増え、生活にも余裕が出てくるでしょう。また一般的には30代や40代と比べて収入が増えるため、経済的なゆとりが生まれます。今ある資産を有効活用するためにも、資産運用を始めようと思う人も多いでしょう。
50代におすすめの資産運用5選
20代や30代でも資産運用をする人は少なくありません。しかし、50代の資産運用の場合は、20代や30代の資産運用とは少しスタンスを変える必要があるでしょう。
50代が資産運用を始めるときにもっとも重視すべきことは、リスクを抑えられるかどうかという点でしょう。毎月の給与収入などにより、定期的に年金以外の収入が見込める期間は限られているので、「全財産を失った」「1,000万円単位のお金がなくなった」というようなハイリスクな投資は避けたほうがいいでしょう。
次の5つの方法は、50代の投資初心者におすすめのリスクとリターンのバランスを考えた資産運用です。それぞれについて詳しくみていきましょう。
- 債券投資
- 株式投資
- NISA
- iDeCo
債券投資
債券投資は、急激な価格変化が比較的少なく、しかも預貯金よりはハイリターンが期待できる投資方法です。例えば個人向け国債の最低年利は0.05%(税引き前)で、一般的な金融機関の普通預金(税引き前、年0.001%)や定期預金(税引き前、年0.002%)と比べて10倍以上の高金利に設定されています。
しかも、債券を発行した団体が破産あるいは財政難に陥らない限り、原則として償還日には額面金額を受け取れるのが特徴です。
参考:財務省「個人向け国債」
※いずれも2024年2月19日時点の金利です。
株式投資
債券投資は償還日まで保有した場合はその間の利金を受け取れるので、短期売買による値上がり益の追求よりも長期投資に向いています。一方、株式投資は債券と異なり、値下がりするリスクはありますが、値上がりすることも期待できるので、運用次第では高利回りな投資を行えます。
NISA
投資信託で資産運用を検討している方は、NISAを利用してみてはいかがでしょうか。NISAとは、2014年1月にスタートした、毎年一定金額の範囲内で購入した株式や投資信託などの金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。
通常、株式や投資信託などの金融商品で投資を行い、得られた利益には20.315%の税金が発生するため、利益の8割弱しか受け取れませんが、NISAを利用すれば効率よく運用できます。
2024年1月からは、NISA制度がリニューアルされ、より使いやすい制度に変わりました。変更内容は以下の表のとおりです。
出所:金融庁「新しいNISA」を参考に株式会社Fan作成
ここからは、2024年1月にスタートした新NISA制度について、説明していきます。
■つみたて投資枠
新NISA制度において、旧制度の「つみたてNISA」に対応する投資枠は「つみたて投資枠」となります。特に、少額からの投資を支援するための制度となります。
つみたて投資枠の対象商品は、手数料が低水準で、頻繁な分配金の支払いがない、長期投資に適した銘柄に限定されています。
積立式の投資は、一括投資と比較してもリスクを軽減できる可能性が高いでしょう。その理由は、「ドルコスト平均法」を用いて運用できるからです。例えば、毎月一定額だけ投資信託を購入すれば、まとめて多額の投資信託を購入する場合と比べて割高なタイミングで購入するリスクを回避できます。
時間を分散して投資をすることで、高値掴みのリスクを軽減できるのです。「卵を一つのカゴに盛るな」という言葉は、資産を分散させることでリスクも分散させて投資をすることを指した相場の格言として有名です。
ドルコスト平均法については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
ドルコスト平均法とは?「ハイリスクとハイリターンを目指した運用」
新制度のつみたて投資枠は毎年最大120万円、非課税期間は無期限で保有できるので、長期的に運用していけるのが特徴です。旧制度では、一般NISAとつみたてNISAは併用できませんでしたが、新制度では成長投資枠との併用が可能です。また、2023年12月までに旧制度において投資した商品は、新制度とは別枠での運用になります。
■成長投資枠
新NISA制度において、旧制度の「一般NISA」に対応する投資枠は、「成長投資枠」となります。この枠では、年間240万円まで投資が可能で、こちらも非課税保有期間は無期限となり、長期的に運用することが可能です。投資対象商品は、上場株式・投資信託等(※1)となります。
投資対象商品は、成長投資枠の方がつみたて投資枠よりも広い選択肢の中から選べます。つみたて投資枠と成長投資枠は先述の通り併用が可能なので、つみたて投資枠で低リスクの商品を選び、成長投資枠でリスクを少し上げた商品を選択し、より高いリターンを期待するという方法もあります。また、つみたて投資枠では買えない株式やETF(※2)を購入し、分散投資を図る方法も検討してみると良いでしょう。
(※1)①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託及びデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
(※2)ETF:上場投資信託
iDeCo
毎月定額を積み立て、なおかつ利益が非課税になる制度としてはiDeCoも挙げられます。iDeCoは利益が非課税になるだけでなく、月々の掛金も全額所得控除の対象となるので、さらに大きな節税効果を得られるでしょう。
ただし、iDeCoは職業によって掛金に制限があります。また、いつでも運用しているお金を引き出せるNISAとは異なり、原則60歳までは引き出せません。老後資金を貯めるには適した方法ですが、急な支出には対応しにくいという特徴があります。
iDeCoはNISAと併用できます。2つの制度を併用して老後資金を貯めることも検討してみましょう。
資産運用を始める前に必要な3つの準備
より慎重に資産運用をすすめるために、次の3つのポイントに留意しておきましょう。
- 老後の生活費を計算する
- イレギュラーな出費の予算も組む
- 投資について勉強する
1.老後の生活費を計算する
老後資金に余裕があれば、それだけ自由度の高い老後生活を楽しめます。しかし、老後資金を貯めるために今の生活を切り詰めるとなると本末転倒です。まずは老後の生活費がどの程度かかるのかを計算し、無理なく貯められる金額を用意しましょう。
2.イレギュラーな出費の予算も組む
老後資金を計算する上で、例えば毎月の不足額が5万円の場合、「1年で60万円」「30年だと1,800万円」というように厳密に不足額を決めてしまうと、老後にイレギュラーな出費が生じたときに対応できなくなる恐れがあります。
予想される生活費以外にも突発的な費用がどれくらい必要なのかを想定し、予備のお金も用意しておきましょう。
3.投資について勉強する
投資にはリスクが付きものです。しかし、投資について学ぶことでリスクを減らし、より効率の良い資産運用を実現できます。どのように投資をスタートして良いのかわからない場合は、まず資産運用の専門家の話を聞いてみましょう。
投資信託相談プラザでは50代や60代の人に向けて、専門家による資産運用のセミナーを開催しています。全国のさまざまな地域で、またオンラインでも開催しているので、お気軽にお問い合わせください。いずれのセミナーも無料で利用できます。
資産運用や投資について学ぼう
50代から資産運用を始めても遅くはありません。30代や40代と比べると子育てもひと段落し、収入も増えている人が多いため、老後資金を貯めることができる人も多いでしょう。しかし、老後までの期間があまり長くないため、リスクを抑え、なおかつリターンを期待できる方法で運用していくことが必要です。資産運用についての正しい知識を身につけ、慎重に投資を始めていきましょう。
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NISAのご注意事項
・配当金等は口座開設をした金融機関等経由で交付されないものは非課税となりません。NISA口座で国内上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
・同一年において1人1口座(1金融機関)しか開設できません。
・NISAで購入できる商品は金融商品取引業者が指定する商品に限られます。
・2024年からの新NISAでは年間投資枠と非課税保有限度額が設定されます。
・損失は税務上ないものとされます。
・出国により非居住者に該当する場合、NISA口座で上場株式等の管理を行うことはできません。
・2024年からの新NISAにおけるつみたて投資枠では積立による定期・継続的な買付しかできません。
※ その他、2024年からの新NISAに関するご注意事項、並びに2023年までの一般NISA ・つみたてNISA等に関するご注意事項の詳細は金融商品取引業者のWEBサイトにてご確認ください。
iDeCoのご注意事項
投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客様が実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
ご投資にあたっては、商品概要や目論見書(目論見書補完書面)をよくお読みください。
金融商品仲介業者である弊社は、お客さま(加入者等)に対して特定の商品への投資について指図を行うこと、または指図を行わないことを勧めるものではありません。
掲載されている各コンテンツは、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で作成したものではありません。
投資対象、投資機会の選択などの投資に係る最終決定は、お客さまご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
このコラムの執筆者
MONEY HUB PLUS 編集部
株式会社Fan
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